第15話 破綻
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者同士で。小倉が少し緊張を解きかけた次の瞬間、しかし、スピーカーからは信じられない言葉が飛び出してきた。
《……で、日本人の癖に中共の使いパシリするってのは、一体どういう気分なんすかァ?反社会勢力の皆さん?》
小倉は、田中が一体何を言ったのか、すぐには理解できなかった。それは拓州会構成員も同じらしく、突然スピーカーが発した嘲りの言葉に、理解が追いついてないようだった。しかし、スピーカーの向こうの田中は、そんな状況を斟酌もせずに続ける。
《ヤクザも落ちぶれたもんだよなァ、金積まれただけで支那人の言うことなんて聞くようになるとはよ!任侠仁義が笑わせるぜ!日本を植民地にしようとしてる連中の言うことに従いやがって!同じ日本人を裏切るような真似しやがってよ!誰がお前らなんか頼るか、バーーカ!俺をお前らみたいなゴミクズと一緒にすんな!同じ爪弾き者でもレベルが違うんだ、レベルが!あばよ、チャンコロヤクザ!》
構成員達の表情に段々と怒りが蓄積され、反論となって放出される直前の、絶妙なタイミングで一方的に田中からの通話が途絶えた。スピーカーがツー、ツーと間抜けな音だけを響かせる。小倉は、キョトンとしていた。というか、キョトンとするほかない。人質として差し出されている自分。その存在に関わらず、田中は拓州会に全力で喧嘩を売った。それが意味する所は一つ……
ガチャン!
小倉は後頭部を引っ掴まれ、ローテーブルに顔から叩きつけられた。自分の背後に控えていた構成員がやったのだろう。ドアを守っていた2人も歩み寄ってくる。スキンヘッドのこめかみに青筋立てて、眉間に寄ったシワが怒りの程度を表している。ソファに座ったまま小倉を見下ろすボスだけは冷静だった。いや、冷静というより、冷酷。そう表現するのが正しい眼光が、色のついたメガネの奥にちらついている。
「……随分と大人をバカにしてくれるガキだな。今時珍しいが、それなら大人も本気を出してやるよ」
ボスは立ち上がり、ローテーブルに押さえつけられた小倉の横顔を片足で踏んづけた。靴底がグリグリと、肌を擦る。
「お前をわざわざここに残してバカにしやがたって事は、奴の代わりにお前をどうしたって構わねえって事なんだろうなァ。お前をさんざ痛ぶって、奴の居場所をゲロらせてみやがれって、そういう事なんだろうな、おい?」
「…………」
田中に、裏切られた。小倉は、漠然と思った。不思議と、甲洋の監督室での出来事のように……どうしようもなく、理不尽で、やるせない思いというのは湧いてこなかったのが不思議だった。そうだ。こうなる可能性は十分あった。自分はそれを想像できなかった訳では無かったはずだ。何せ田中は、国に追われる逃亡者なのだ。爪弾き者という意味では、ここにいるヤクザどもとも変
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