第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
27.Jury・Night:『Graaki-Apocalypse』
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れかい? いやはや、矢張面白いなぁ、貴様は」
クツクツと、喉奥で蛙のように笑いながら。顎でしゃくってみせた、その先に────居た。五・六十もの衆人環視、否、衆死人環視の中、手術台に……否、解剖台に乗せられた涙子が。
失神か薬物か、はたまた魔術かは分からないが、気を失している様子で。
そんな彼女のすぐ近くに、長身の姿がある。黒く変色した返り血に染まった白衣に袖を通し……
「さて……観客も揃った。では、今宵の宴を開くとしような、親愛なる信徒諸君?」
以前の爽やかさの欠片もない、狂気に満ちた嘲笑を浮かべた────西之 湊医師の姿がある。不浄その物が凝り固まったような、黒い棘……グラーキの棘であるメスを手にした医者が。亡者共の阿鼻叫喚の中、神を崇める司祭のように鷹揚に振る舞う。
「記念すべき、十二体目────我が教団の審判の使徒が揃うのだ! 崇めよ、奉れ! グラーキを!」
その、空いた左手が虚空より一冊の書物を掴み取る。バサバサと、閉ざされた空間である筈の此処で、何処からか吹き込んできた風に乗る紙片が集う。『]T』と銘打たれた表紙の……“グラーキ黙示録”へと。
周囲の亡者、その中でも異様な雰囲気の九体も其々に書を手にする。右から『V』、『W』と……『]』まで。生きたままの男女、下卑た雰囲気の背徳と悪徳の……言わば邪教の宣教師か。
そして、気付く。否、恐らくは、わざと意識していなかったのだ。あんなものに気付いては、正気が保てないと本能の方が先に気付いて。
「見よ、対馬君。神々しいとは思わんかね? あれが、我らの神だ。死を踏み越える奇跡をもたらすモノだ。末期癌だった私、死に逝くだけの私に、永らえる術を与えてくれた……神だ!」
「ッ────、ッ────?!!」
そんな『モノ』を恍惚と見詰めて、『U』の黙示録を携えた槍使いは嘆息する。まるで、日曜礼拝の讃美歌に耳を傾けるように。亡者共の唸り、呻き、悲鳴を聞きながら。
まさに衝撃そのものだ、涙が知らず流れた。感動と言えば感動だろう、恐怖や絶望、自殺衝動であれども感情が動かされたのであれば。
「武錬など、何の意味もなかった。私は私の身体に殺されようとしていた。信じて鍛えた自分自身に負けようとしていた、私を救ってくださったのだ!」
「あ────、あ……!」
見た事を後悔する。一生、夢に見るだろう。死の安寧に微睡むその日まで、ずっと。
蛞蝓。見た目は、正に。しかし、林立する黒い棘がまるで、雲丹のような。額に当たる部分らしき場所から三本の蝸牛じみた目を伸ばし、八目鰻のような
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