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戦国異伝
第百九十話 龍王山の戦いその六

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「では行くぞ」
「畏まりました」
「それでは」
 息子達も父の言葉に応え主だった家臣達もだった、本陣を出て。
 皆山の下に布陣している織田軍を見た、元就はその先陣の宇喜多の旗今は青くなっているそれを見てだった。 
 持っている軍配を振り下ろしてだ、こう言った。
「攻めよ!」
「はっ!」
 皆それに応え一気にだった、山を降りその勢いでだった。
 その織田の軍勢を攻める、その彼等を見てだった。
 宇喜多は馬上からだ、己の兵達に言った。
「案ずるな、我等は守っていればよい」
「このままですな」
「敵を恐れずに」
「鉄砲は構えておるな」
 このことも問うのだった。
「それは」
「はい、既に」
「構えております」
 兵達がすぐに答えた。
「後はです」
「殿が命じられれば」
「左様か」
「では今より」
「鉄砲を」
「まず鉄砲を撃ちな」
 そして、というのだ。
「それからだ」
「はい、弓矢を放ち」
「長槍もですな」
「それも出して」
「織田家の戦の仕方で戦う」
 まさにそれでというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「交代を命じられるまで」
「毛利元就自ら来ようとも崩れるな」
 決して、というのだ。
「よいな」
「わかっております、では」
「今より」
 宇喜多家の者達は若き主の言葉に応えてだ、まずは彼等がこれまで使ったことのない数の鉄砲を使ってだ。
 毛利の軍勢に向けて放った、それから。
 弓矢を放ち長槍も出して毛利の軍勢を寄せつけない、元就はその彼等と戦いつつ少し顔を顰めさせて言った。
「織田家の戦、聞いた通りじゃな」
「近寄せまぬな」
「とにかく相手を」
 父と共にいる息子達も言う。
「そうしてですな」
「犠牲を出さない」
「そうした戦ですな」
「そうじゃ、これでは中々近寄れぬ」
 実際に、とだ。元就も息子達に答える。
「鉄砲に弓矢にな」
「長槍で」
「その三つによって」
「近寄れぬ、しかしな」
 それでもとも言う元就だった、そしてだった。
 息子達と家臣達にだ、このうえなく強い声でこう告げた。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「ここは」
「鉄砲が一旦撃たれる」 
 これは絶対にある、そのうえでのことだった。
「そしてじゃ」
「次にですな」
「撃たれるまでの間に」
「突っ込みじゃ」
「弓矢と槍が繰り出される前にも」
「一気に突っ込んで、ですな」
「そうじゃ、敵陣に斬り込みじゃ」
 そのうえでだというのだ。
「戦をするぞ」
「近寄れぬのならな近寄る、ですな」
 元春がここでこう言った。
「そうですな」
「その通りじゃ」
 元就も次子の言葉に頷く、そうしてだった。
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