第百九十話 龍王山の戦いその三
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「そしてな」
「負けようとも」
「意地を見せるのじゃ」
武門のそれをというのだ。
「そして戦う」
「そうされますか」
「そして清水宗春もじゃ」
彼もというのだ。
「あ奴も失わぬ」
「決してですな」
「あの者も」
「うむ、あの者は毛利家にとって必要じゃ」
それ故にというのだ。
「何としてもな」
「失わずにですか」
「そのうえで戦を」
「我等は滅びる訳にはいかぬ」
絶対に、というのだ。
「だから戦いじゃ」
「負けようとも」
「毛利の戦を見せてですか」
「家を守る」
「そうするのですな」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
「何としてもな」
「ではこれより」
「織田の本軍に向かい」
「白昼堂々正面より戦を挑む」
勝敗に関わらずだ、そうするというのだ。
「わし自らな」
「それで父上」
隆景が元就に問うてきた。
「ここでもでしょうか」
「謀か」
元就は末息子の言うことがわかっていた、元就といえばよく世間ではこれの第一人者と言われているからだ。
「それを使うかどうかか」
「どうされますか」
「今回は別じゃ」
こう返す元就だった。
「流石にな」
「それでは」
「謀は使わぬ」
それは決して、というのだ。
「あくまで正面から攻める」
「そうされるのですか」
「何度も言うが織田信長は侮れぬ」
元就をしてそう言わしめる相手だというのだ。
「謀を使おうともな」
「防がれますか」
「間違いなくな」
「父上の謀であろうとも」
「そうじゃ、それにじゃ」
「今回はですか」
「正々堂々と戦うからな」
そう決めたからにはこそ、というのだ。
「そうしたことは使わずにじゃ」
「戦われ」
「そして生き残るぞ」
またこう言うのだった、そしてだった。
元就は五万の兵を率いてその上で進み龍王山まで少しといった場所になってだ、多く出していた斥候達から報を受けた。
「そうか、もうか」
「はい、織田の大軍がです」
「東に来ております」
「そしてです」
「我等の方に来ております」
「わかった」
その報を聞いてだ、元就は確かな声で答えた。
そしてそのうえでだ、全軍に対して言った。
「では今よりじゃ」
「はい、織田軍を攻めますか」
「これより」
「龍王山に入りじゃ」
そうしてというのだ。
「そこを本陣として織田軍と戦うぞ」
「そうされますか」
「まずは山に入られますか」
「山に入りじゃ」
それを守りとして、というのだ。
「そのうえで戦を仕掛けるぞ、それとじゃ」
「それと、とは」
「織田の軍は鉄砲がとかく多い」
このことは元就も既に知っている、彼等のそのことをだ、
「弓矢もな、槍も長い」
「つまり攻めにくい」
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