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戦国異伝
第百九十話 龍王山の戦いその二

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「勝てる相手ではない」
「だからですか」
「夜襲を仕掛けるべきではなかったのですか」
「それでは」
「うむ、勝てぬのならな」
 それならばと言う元就だった。
「昼間に正面から堂々と戦を挑むべきだったのじゃ」
「それは何故でしょうか」
「負けようとも武門の意地を見せられた」
 それ故にというのだ。
「だから昼間に戦を挑むべきだったのじゃ」
「左様でしか」
「そうあるべきでしたか」
「それならば負けてもじゃ」
 そうなることが決まっていても、というのだ。
「武門の意地を天下に見せてじゃ」
「そして、ですか」
「備前や美作の国人達も」
「あの者達もまた」
「逆らうことはなかった」
 それもだというのだ。
「あそこまではな」
「全ては我等の不覚」
「まことに申し訳ありませぬ」
「よい。御主達は十二分に働いた」
 元就は息子達に謝罪はよしとした。
「そして見事に戦った」
「夜襲でしくじっても」
「それでも」
「そうじゃ、そこに抜かりはなかった。勝敗は戦の常じゃしな」
「だから、、ですか」
「この戦は」
「よかったのじゃ」
 これで、というのだ。そうしてだった。
 その話をしてだった、それから。
 元就はあらためてだ、その場にいる息子達と主な家臣達に言った。
「ではこれからはわし自らじゃ」
「父上がですか」
「殿が」
「うむ、兵を率いな」
 そうしてというのだ。
「織田家に毛利の戦を見せてじゃ」
「そして、ですか」
「そのうえで」
「毛利の家を守る」
 必ずそうするとだ、強い声で言う元就だった。
「そうしてみせる」
「では父上」
「これより我等は」
「我等は五万の兵を率いておる」
 彼等は、というのだ。
「そして残り一万の兵のうち六千をな」
「高松城に置いて、ですな」
 ここで言ったのは元春だった。
「予備の兵として」
「そうじゃ、清水宗春を置いてな」
「高松城も守りますな」
「備中はあの城が陥ちれば終わりじゃ」
 国自体が織田家のものとなるというのだ。
「あの堅城がなくなればな」
「そうなりますな」
「そして備中を失えば」
 その国をというのだった。
「さすればな」
「毛利もですな」
「後は備後もやすやすと織田のものとなりじゃ」
 そして、というのだ。
「安芸に迫られる」
「織田家の大軍に」
「そうなれば毛利は終わりじゃ」
 そのまま織田に踏み潰されるというのだ。
「だからじゃ」
「それ故に」
「戦う」
 何としても、というのだ。
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