第三十三話 神もなくその三
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「面白いわね」
「切られた位ではね」
「何ともないのね」
「そうよ、私の蔦はね」
その背中から出して来ているそれはだ。
「切られても切られても伸びてくるのよ」
「生命力が強いのね」
「私と同じくね」
本体である彼女と、というのだ。
「それ位では何ともないわ」
「けれど切ることによって」
「捕らえられることは防いでいるというのね」
「ええ、無駄ではないわ」
だからこそ切っているというのだ。
「こうしてね」
「そうなのね、けれどね」
「幾ら切られてもというのね」
「この通りよ」
見ればだった、迫って来ていた。菖蒲と蔦達の距離は次第に狭まってきていた。しかも蔦は四方八方にある。
その蔦達を操りながらだ、怪人は菖蒲にこうも言った。
「私の蔦は次第に貴女を追い詰めているわよ」
「確かにね」
「それでどうして勝つのかしら」
怪人は勝ち誇る様にして菖蒲に問いもした。
「一体」
「まだわからないわ」
菖蒲はこの時も冷静に言うのだった。
「それはね」
「わからなくても勝てるのかしら」
「敗れるまでにわかれば」
そうなれば、というのだ。
「大丈夫よ」
「随分と余裕ね」
「余裕ではないわ」
「では何かしら」
「落ち着いているだけよ」
それだけだとだ、やはり冷静に言う菖蒲だった。
「焦っても仕方がないから」
「頭がいいのね」
怪人は菖蒲のそうした言葉を受けてわかった、彼女の頭がいいことがだ。
「随分と」
「そうね。私も自分の頭は悪いとは思わないわ」
怪人は背中の袋からだけでなく両手も前に出し十本の指もまた蔦にして菖蒲に向かって伸ばしてきていた、それで菖蒲を完全に絡め取ろうとしているのは明らかだった。
その指が変形した蔦達も水の刃を放って切りながらだ、菖蒲はさらに言うのだった。
「ただ、それでも誰よりもいいとはね」
「思っていないのね」
「人の頭のよさは知れているわ」
たかが、というのだ。
「それは個人個人の努力でどうにもなるわ」
「その程度のものだというのね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「その程度のものよ」
「だから過信はしないのね」
「過信すればそれで知は曇るわ」
たったそれだけのことでだ、そうなるというのだ。菖蒲は怪人の蔦が迫るその中でも退かずに言うのだった。刃を放ちつつ。
「自惚れで動きが鈍って」
「そのこともわかっているのね」
「そのつもりよ。では」
「私の倒し方を見付けるのね」
「ええ、そしてね」
「そしてなのね」
「それはわかってきたわ」
今の攻防の中でというのだ。
「まだ完全にではないけれど」
「では近いうちになのね」
「私は貴女に勝つことになるわ」
「では見せてもらえるかしら」
「ええ、もう少
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