第三十三話 神もなくその一
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美しき異形達
第三十三話 神もなく
菖蒲と桜はそれぞれ怪人と対峙した、菖蒲は自分の目の前に立っているウツボカヅラの怪人に対して言った。
「それでは今からね」
「ええ、丁渡いいわ」
「丁渡いい、どういうことかしら」
「伊勢神宮の前だから」
その伊勢神宮に行き来している道にいるからだというのだ。
「丁渡いいわ」
「神様の前だから」
「弔ってもらえるからね」
「そうね、神社でもそうしたことはするわ」
寺だけでなく、というのだ。
「宗教だからね」
「そうね、だから丁渡いいわ」
「貴女達は違うみたいだけれど」
「私にはそうしたことはいいわ」
全く、というのだ。
「神様も仏様も興味はないわ」
「怪人だから」
「ええ、そうよ。私達にそうしたことは縁がないわ」
「それでなのね」
「若し、そんなことはないけれど」
絶対の自信を以て言う怪人だった。
「私が敗れてもね」
「弔われることはないというのね」
「その必要はないわ」
あっさりとした言葉だった、まるで自分のことではない様に。
「それは言っておくわ」
「そういうことね」
「けれど貴女には冥福を祈ってあげるわ」
楽しげな口調だった、菖蒲に対しては。
「神様にね」
「その心配は杞憂に終わると言っておくわ」
「そう言うのね、ではね」
「今から」
「はじめましょう」
背中のウツボカヅラの袋からだった、怪人はあるものを出して来た。それは無数のいやらしいオレンジ色の蔦だった。
その蔦を見てだ、菊は首を傾げさせて言った。
「あれっ、ウツボカヅラって」
「うん、そうよね」
向日葵がその菊に応える。
「落ちてきた虫を溶かして栄養にするけれど」
「蔦とかなかったわよね」
「本当はね」
「けれどあの怪人にはあるわね」
「そこが普通のウツボカヅラと違うのね」
「そうね」
こう二人で話すのだった。
「そこはね」
「全く違うわね」
「そうよ、私はね」
怪人の方もだ、二人に対して言うのだった。その顔を向けて。
「普通のウツボカヅラとち織がってね」
「蔦があるのね」
「今出したみたいに」
「そうよ、この蔦達で捕まえて」
そして、というのだ。
「背中に入れて溶かして食べてあげるのよ」
「そういうことね、だからなのね」
「蔦があるのね」
「私は待つことはしないわ」
不気味な笑みを含めた言葉だった。
「自分から捕まえて食べるのよ」
「随分と活発な食虫植物ね、それはまた」
今度は菫が言った。
「待つことはしないなんて」
「そうかもね。けれどね」
「それが貴女ね」
「そう思ってくれていいわ」
「私もよ」
今度
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