R.O.M -数字喰い虫- 1/4
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小さな手が、芋虫を掴みとった。
目の前を見ると、そこには先ほどまでクレープを食べていた金髪の女の子がいた。
近くで見ると、人形のように可愛らしい少女だった。一瞬だけ、その姿によって芋虫の事を忘れた。
「わたしメリーさん。落とした小銭、拾ってあげる」
「あ……わ、わたしは美咲。メリーちゃん、ありがとうね?」
「構わない。私がやりたいからやっただけなの」
メリーという少女は、無表情で芋虫を財布に放り込み、その綺麗で細い指を使って財布の口をそっと閉じた。財布の口を自分で触りたくなかったのをあらかじめ知っていたような、スムーズな動きだった。
どうして――と聞こうとした私の耳元に、メリーが小さく囁く。
「耐えられなくなったら、お財布のなかのメモを見るといいよ」
「えっ――?」
何の事か分からずに聞き返そうと手を伸ばすが、メリーは既に一緒にいたスーツの男と手を繋いで帰っていた。
「お客さん。お客さん?ベリーベリークレープ、出来ましたよ?」
「あ……はい」
「いい子だねぇ、あの子。でもこの辺ではあんまり見たことがないなぁ」
店員の言葉は耳に入らなかった。メリーの言葉の意味や意図が分からないまま、私はクレープを受け取って齧った。美味しい筈なのに、なんとなくこの中にも芋虫が入っているような錯覚を覚えて、純粋に味を楽しむことは出来なかった。
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