R.O.M -数字喰い虫- 1/4
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うに不規則に重ね続けた図形。
部分的に見れば数列のように規則的なのに、別の方向から見ると子供が書きなぐったように不規則で、連なっているようでいて出鱈目で、少なくとも美咲の目には、それは数字をびっしり書き重ねた塊のようにしか映らなかった。
図形と呼びはしたが、一応円を描くように書きこまれているだけであり、どちらかというと前衛アートと呼称した方がしっくりくる。この数学ノートの中で、100人が100人これだけが異質だと断言できるそれは、不思議な存在感を放っている。
これをずっと見ていると、不意に言いようのない不安感に駆られる。
どこか、これは目に映してはいけないと思わせる本能的忌避感。
でも、内面から湧き上がる誘惑は、その算用数字の塊をもっと見せろと耳の裏で囁く。
勉強中は極力にしないように心掛けてきたが、テストを通り過ぎてみると異様なまでにその図形に目を惹かれた。相反する感情を抱きながらも、好奇心はやらない事よりもやる事を後押しした。
見つめれば見つめるほどに、その数字は蠱惑的なまでの引力を感じた。
数字の羅列。数字の隙間。数字の重なり。
無意味で混沌とした数字の塊が心の奥底にあるパズルの形を勝手に組み替えていくようで、段々と思考というものが遠のいていくような――
不意に、ヴヴヴヴ、とポケットを小刻みに揺らす振動音が美咲を我に返した。
「……?あ、メール……」
見れば、それは春歌からのメールだった。
図形を見つめ続けてどれほど時間が経っただろうか。目を覚ますように頭を振って周囲を見渡すと既に教室にはほとんど人が残っておらず、日も大分傾いている。外から差し込む茜色の夕焼けが嫌に眩しかった。
メールを開いて読むと、風邪が酷くて感染したくないから見舞いには来なくていいとの旨が書きこまれていた。ノートの返却に関しては次に学校へ来たときに渡してくれればいいとあり、最後に「辛く当たってごめんなさい」と謝罪の意まで書かれていた。
まさか先に謝らせてしまうとは。
面と向かって謝罪しようと思っていたが、先に謝罪させてしまった以上、メールでもいいからこちらも謝るべきだろう。今回の件はどう考えてもこちら側に原因があるのだ。向こうもそれは分かっているのだろうが、それでも歩み寄ってきたのだ。ここで突っぱねてしまうほど美咲は意地を張った女ではなかった。
『私もごめんなさい。次からは二度とノートを取ったりしません。代わりに勉強を教えてもらうことになるかもだけど、許してね?風邪が治ったら評判のクレープ屋にでも一緒に行こうよ!』
素早く打ちこんで、送信した。
何はともあれこれできっと仲違いは終わりをつげ、次に会った時には仲直りできている筈だ。
ホッと一息ついた美咲は、そのまま家へと帰っ
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