R.O.M -数字喰い虫- 1/4
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ノートの――もとい、美咲にノートを貸した親友である春歌だ。
彼女は、今日は体調不良だという事で休んでいた。
珍しい、と思う。自己管理には人一倍気を配っていた彼女がテスト当日に体調を崩すなどと。
おそらく彼女のテスト得点は、「受けていたらこの程度取っただろう」という見込み点で採点されるのだろう。これは普通に受けるよりも低く見積もられることもあるので嫌だ、と春歌がぼやていたのを思い出す。
返しそびれたノートを弄びながら、先ほどの伸びで漏らした物とは違う深いため息が漏れた。
「………怒ってる、かな?風邪ひいて休みみたいだけど……それも私がノート借りたせいで夜更かししたとかが原因かもしれないし。なんか怒ってる気がしてきた。や、絶対に怒ってる……」
何とも言えない罪悪感が重く胸に落ちた。ノートをかっぱらって以来、ずっと春歌の態度が冷たかった事を考えれば、これで怒っていないと考える方が難しいというものだ。
結局死に物狂いでノートを写した結果、試験当日まで返せない事態に陥ってしまったのは確実に美咲が悪い。
加えて、もしも体調不良の遠因が美咲にあったとすればもっと悪い。
美咲とて人の子。幾ら無神経でも悪気や罪悪感ぐらいは感じることがある。
特に普段から何かと迷惑をかけ気味の春歌が相手となると、今更になって後悔が襲ってくる。
春歌は基本的には人がいいが、本気で怒らせると途轍もなく怖い。
一度本気で怒らせてしまった時の事を考えて美咲は体を震わせる。
何をして怒らせたのかは、思い出したくもないので語らない事を許してほしい。
だが、あれほど必死に土下座して許しを請うた経験は、恐らく一生忘れる事の出来ない経験だ。
あの時に春歌が許してくれなかったら、確実に絶交状態だったと美咲は確信している。
過去を振り返って肩を震わせた美咲は、ひとり深く反省した。
「謝ろう。何はともあれ謝ろう。そんでもって次回からはちゃんと数学の勉強を……いや、やっぱ自力は無理だから春歌に予め教えてもらおう」
自力で出来る事とできない事の区別はついているため、実現不可能な内容は出来ると断言しないのが美咲のチャーミングな所である。
それにしても、と美咲はノートの後ろの方をめくった。
春歌の数学ノートのびっしりと書き込みがされたエリアを通り過ぎ、まだ何も書いていない白紙のエリアを通り過ぎ、そして手は最後のページで止まる。
「この最後のページにあった図形、何なんだろう……?見た目はなんか落書きっぽいけど、春歌が落書きしてる所なんて見たことないよ」
それは、一言で言うならば「算用数字の塊」だった。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、0。小学生でも理解が出来る10つの数字を、まるで編み物でもするかのよ
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