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思惑の色は――紅
第1話 狼藉
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 聖杯戦争とは、聖杯を巡る、7人の魔術師による闘争である。
 聖杯とは、7人の魔術師の許に7騎の英霊を召喚し、殺し合わせる万能の願望機である。
 英霊には、聖杯によって7つのクラスが各々与えられる。
 魔術師は令呪をもってマスターとなり、契約に応じた英霊をサーヴァントとして従える。他の6つを討ち破り、己とその英霊の宿願を、聖杯の力で叶えさせる為に。
 それが、聖杯戦争――


 思えば、そのサーヴァントは最初から、どこか異様であった。
 褐色の肌に短く切り揃えられた銀の髪、赤い服と黒い甲冑の奇妙な取り合わせ、背の高い偉丈夫――この特徴に当て嵌まる、英霊となりそうな過去の人物とは誰か?
 今までに読み解いた、如何なる神話、伝説、偉人録にも、その風貌、戦法、立ち振る舞いに合致する人物はない。
 西洋人のようであり、中東人のようであり、インド、中国……それでいて、日本人のようで。そう、本人はどうやら隠したがっているようだが、そこはかとなく漂ってくる、日本人臭さがあるのだ、あいつには。
 聖杯がサーヴァントとして召喚する英霊は原則として西側の、ヨーロッパとその周辺あたりに縁ある人物に限定されるはずなのだが、そうなるとますます誰であるのか分からなくなる。
 もしかすると、それは契約の儀式に失敗しかけたことによる齟齬なのかもしれない。つまり、儀式の些細な手違いで召喚自体が不完全なものとなり、「何者でもない者」が召喚されたと、こう考えられはしないか。
 でも、まあいいか。アーチャーのクラスとして召喚されたそのサーヴァントは不審な点も多かれど、そこそこ頼りになり、また付き合いやすい性格をしているから。
 マスターのひとりである遠坂凛は、そう思っていた。第5次聖杯戦争は遂にはじまり、狙っていたセイバーのサーヴァントとは残念ながら契約できなかった。だが、自分ならばそのアーチャーを用いてでも難なく、最後まで勝ち抜けられると、彼女は確信していた。
 その考えの修正を迫られたのは、契約の儀式を終えた夜の、次の日の夜のことであった。
「!……あ……何、な…んの真似よ、アーチャー」
 不意の仕打ちに、凛は一瞬言葉が詰まり、それから搾り出すように声をあげた。
「何の真似か、ではない。ほら、動くな……しっかりと揉めないだろう」
「揉む……あ! 嫌ぁっ!」
 心得ていると言わんばかりなアーチャーの返答に、凛は全身で暴れ抗おうとする。
 彼女は、背後から抱き締められていた。着ているものは、ブレザーの制服に、赤いコート。自宅の屋敷に戻ったばかりである。街全体を見渡せる高いビルの屋上から、足下の夜景を眺めた帰りだ。冷えてしまった身体に、突然の抱擁はむしろ気持ち良かった。しかし、アーチャーはさらに、制服のベストの内側にまで腕を突っ込み、あろうことか、凛のまだ幼
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