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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆生きる意味
第六拾弐話 コハレタセカヰ
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に、その笑みが凍りついた。少年の手を強く握りしめる。
「うぐっ……そろそろ、みたいです」
「……もっと、お話したかったな」
「わたしも、です」
「向こうに行っても、達者でやれよ」
「ミドリさん、こんな時まで、相変わらずですね」
 少女は無理に笑顔を作った。少年の手を更に強く握る。少年が何か言いたげに口を開いたが、何の言葉も出てこなかった。
「マルバさん――わたしも、です。あなたに会えて、良かった。また、会いましょう」

 彼女はゆっくりと目を閉じると……がしゃーんと大きな音を立て、青い破片となって砕け散った。三年前まではディスコネクション警告が出たものだったが、今や文字化けしてしまって残された文字を読むこともできない。いずれにせよ、この世界に残された命が一つ、散っていったことは確かだった。

「くそッ……! 俺はまた失ったのかッ……!」
 ミドリが床を強く殴りつけた。すると彼の左腕が砕け散り、彼は唖然として自分の腕を見つめた。
「まじかよ……崩壊が一気に進んじまった。あと残ってるプレイヤーはお前一人だな、マルバ」
 ミドリが少年に向かって話しかけるが、当然のように返事は無い。ミドリがそちらに視線を向けると、彼の膝の上の毛玉が、ばたばたともがいているのに気づいた。少年は毛玉をゆっくり撫で、すっと目を閉じ……
 なんの前触れもなしに、ただ少女の後を追うように――砕け散った。


 最後の二人のプレイヤーが死んでいった次の日、アインクラッドが崩壊を始めた。残っているのは海水による侵食を免れた九十八層以上だけだったので、全百層が崩壊し終えるまでの残り時間は短かかった。
「準備はいいか」
「……うん」
「もう何の意味もないかもしれないが……それでも、この世界で消えていったプレイヤーたちの無念を晴らすため! 行くぞ!!」
 ミドリが第百層『紅玉宮』の扉を開け放つと、ごごごごご……と不気味な音を立て、ボス部屋の中央に死神のシルエットが浮かび上がった。ミドリたちは全力で駆け出していく。仮想の関節が悲鳴を上げ、ただ走るだけでアバターからポリゴンの欠片が剥離して砕けた。
「うおおぉぉぉォォオオッ!!」
 ソードスキルはもう一年も前に起動できなくなっている。ミドリはただこの世界への怒りを剣に乗せ、モンスターへと叩き付ける。女性もミドリに続いて大剣を振るったが、しかしモンスターのHPは一ドットたりとも減ることはなかった。
 モンスターが鎌を振り上げ、横払いに一閃する。ミドリは伏せて回避し、女性は一歩下がったが、しかしぎりぎり回避し損ねた。一瞬でHPを0にして砕け散る。
「くっ……そおおおぉぉォォッ!」
 ミドリが吠えた。二閃目の鎌を盾で振り払うと、彼は盾をモンスターに向かって投げ捨てた。床を蹴り、拳を叩き込む。モンスターが鎌を振
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