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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十三話  意義のある誤ち 意義のなき正しさ
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!軍使を受け入れる!」
 一際立派な将校が馬から降り立ったのを見ると、大隊長として馬堂少佐は、権藤軍曹に大尉を預けて前に進む。

「〈皇国〉陸軍独立捜索剣虎兵第十一大隊大隊長、馬堂豊久少佐です。」
「〈帝国〉陸軍第三東方辺境領胸甲騎兵連隊聯隊長 男爵大佐 アンドレイ・カミンスキィです。」

 ――凄い美男子だな、年は俺より少し上か? 帝国人は分かりづらい。

「大佐殿、私と私の部隊は〈大協約〉に基づいた降伏を行う用意があります。」
「貴官の決断に敬意を表します。少佐。
〈大協約〉に基づき貴官とその部隊の降伏を受諾します」
胸に手をあて宣誓する姿は彫刻かと思う程に様になっている。
「〈大協約〉の保証する捕虜の権利 その遵守に全力を尽くす事を皇帝ゲオルギィ三世陛下の忠臣にして藩屏たる〈帝国〉軍将校〈帝国〉貴族として誓約いたします。」
 ――貴族、か。 男爵で大佐、幾つなのだろう、この男は。

「貴官の勇気と道義に感謝します。カミンスキィ大佐」
 その言葉で儀式は終わりだ、と言いたいのかカミンスキィ大佐は兜を脱ぎ、親しげな表情をした。
「まさしく勇戦されましたね。少佐。」
 ――なんとまぁ、名演だな、宮野木の糞爺を思い出す。
 裏から滲む悪意を感じとって豊久は内心鼻を鳴らす。
「いえ、真に称賛されるのは兵達です。
常に彼らが砲火に身を晒し、馬を駆り剣牙虎と共に戦場を走ります」

「そう、正しく称賛されるべきは常に兵達です。
ですが兵は――猛獣は――腕の良い猛獣使いの下で初めて有益に働きます。」
 ――そっちが本題か?新兵科の事でも探るつもりか。
「猛獣。剣牙虎の事ですか」

「えぇ、そうでもあります。そして、貴方の部下達の事でもあります」
 ――何のつもりだ?

「何しろあの地、確か――マムロでしたか
其処にいた部隊は全滅するまで勇敢に戦い抜いたのですから」

「!!」
――馬鹿な!!降伏を許可した筈だ!!


「さぞかし勇敢だったのでしょうね。
生憎と私は先遣部隊としてナエガワで貴官の部隊と交戦していたのですが。
マムロで玉砕するまで戦いぬいた部隊が居たと聞きましたよ。」
豊久の顔をみて愉しげにカミンスキィは口角を吊り上げた。
その瞳には蒼白な顔をした敗北者が映っていた。
 ――笑みを見つめて硬直した顔面を戻す。
「確かに、ええ確かに、彼らは勇猛果敢でした。
名誉を持って散った事を誇りに思います。」
言葉を返し、敬礼をすると部隊の元へと歩く。

 ――畜生、俺は出来る限りの要素を塗り潰した筈だ、あの時そう確信した筈だ。
水軍との二重の手段での策は確かに成功した。だがこの事態は何だ?後悔しない為にここまでやったのだぞ?

 自身の策が正しく作動し、弾き出した結果が
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