黎明の光が掃う空に
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為にと言っていた。なら……
「鳳統の為……記憶を失って鳳統を泣かしたから……とか?」
他人の事など放っておけばいいのに出来ない性質で、過去の自分を知れば知るほど関係性を呼び起こされて……そうなれば、彼が誰の為に動くのかは読み切れる。
下らない理由だと思うが、明にとってはそうでもない。そんな事の為に動けるからこそ黒麒麟になれると知っているから。
呆れたように大きなため息が彼の口から洩れた。こんな簡単に、と。
「お前さんは頭がいいな」
「明でいいってば」
「記憶が戻ってないから真名は呼ばん」
「秋兄の気持ちなんか知んないし。今の秋兄でもいいから呼んで、なんかヤなの。気持ち悪いもん」
明は自然に言葉が出る自分が不思議でならない。イカレている同類というだけで、何故か信じるに足りていた。
同時に、逸る心を誤魔化せるこの一時が有り難い。思考を絶望に向けてしまうと、また泣いてしまいそうで嫌だった。
「はぁ……めんどくせぇ。分かったよ、明」
またため息を一つ。月や詠とは違い、この女なら別にいいかと秋斗は割り切る。
こちらに想いを向けているわけでも無い。利用し合うだけの関係性。似たモノ同士だとも分かっている。元より皆を平等になど、扱うつもりもない。
真名に拘る程大切にしたい彼女達とは違い、彼にとって明はそれくらいの距離感が良かった。
「俺は泣かした彼女の為に戦おうとしてる。まんまその通りだ」
「ふーん……来る前にも女の子泣かしてたよね。記憶が消えても秋兄は女たらしの酷い男ってわけだ」
軽い調子で話を続ける。戦う前に落ち込まないで済むのならと、秋斗もそれに合わせて行った。
「そうさな。俺は酷い男でいいよ。誰しもを幸せに出来るなんて思わないし思いたくも無い。それに……遣りたい事があるんでね」
「ひひっ、秋兄はそれでいんじゃない? でも、夕は幸せにして貰うけど」
「……は?」
いきなりの発言に思考が止まる。
夕は自分が暴露する事くらい気にするわけが無いと知っているから、明はそのまま言葉を続ける。
「秋兄に惚れてるかんね、あたしの大切なお姫様はさ。気持ち受け止めてあげなかったらぜーったい許さない♪」
「ちょ、おまっ……えぇー……どんだけ女たらしなんだよ前の俺ぇ……」
「へぇ……白髪の子って曹操軍からだよね? じゃあ劉備軍の時に鳳統だけじゃなくて他にもいたって事かー……あはっ、さいてー♪」
悲痛な声を上げる秋斗に反して、明は楽しげであった。
――あー……そういえば関靖も惚れてたっけ? 夕には既成事実作らせた方がいいかもー。
思い出すのは白馬の片腕。死に際に残した言葉も彼に向けて、瞳に浮かぶ淡い想いの色も確かにあった。
夕の敵の多さに呆れながら、こ
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