黎明の光が掃う空に
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私と明は……ううん、麗羽達も変えたいと思ってる。欲の為に泣く人が、殺される人が出ないように。でもそれを袁家は望んでいない。自分達が潤っていて幸せならそれでいい……だから、変化を恐れて継続を望む。例え誰を蹴落とそうと」
諭すような声音は、私塾で生徒に教えるかのように。
興味深く聞き入っている兵士達は、彼女の話に引き込まれていった。
「あなた達はこんな家が正しいと思う?」
投げられる質問に首を振る。
切り捨てられる側を自覚している彼らは、それを許容できるはずも無い。
「正直に話すと、私は周りが幸せならそれでいい。きっと袁家と同じだと思う。でも……やり方が気に食わないし、もっともっと暖かく出来る方法を知ってる」
昏い光は其処には無く、世界を変えたいと望む智者の輝きが黒瞳に光っていた。
「誰だって死にたくないと思う。幸せになりたいと思う。あなた達だって死にたくなんかないって知ってる」
それでも命を捨てろと、明にずっと教えられてきた兵士達。
人を殺してメシを喰らうヒトデナシを仕事に選んだからには、死ぬことも仕事の内だと、ずっと彼らは教えられてきた。
「しかし……我らは……」
――あなた方二人をずっと見て来て、共に戦いたいと思っているのです。
口を挟もうとした兵士の前で、人差し指を自身の口に当てて、夕は続きを噤ませた。
「うん。あなた達が自分で選んだ仕事。責任は自分にある」
ただ言われるがままにナニカを行うでは無く、自分達の為に戦っているのだとずっと教えられてきた。
張コウ隊の兵士達に言い聞かせるように、夕は言葉を紡いでいく。
「世界を変える意思は其処にある。あなた達は自分を知ってる。あなた達は自分がしたい事をしてる。だから、聞きたい」
ふにゃりと笑い掛ける笑みは、明にだけ見せるような優しいモノで、兵士達は呆気に取られた。
伝えてくるのは信頼と、慈愛の眼差し。決して他に心を開こうとしなかった彼女が、今になって何故……疑問が頭を埋めていく。
「私と一緒に、世界を変えたい? 例え命を失うとしても」
選んで……と言う無言の眼差しに、二人は圧された。
今、こんな話をするからには何かがある。聡く美しい少女は、意味の無い話など決してしないのだから。
目を瞑り、兵士達は思考を巡らせつつ、自分の心を見つめなおしていく。
絶望の淵にいるはずなのに、彼女はまだ諦めていない。
否、否であろう。彼女は救いを求めている。正直に話した上で、自分達に助けてと……そう言っているのだ。
弱気を見せぬその姿は、兵士を率いる軍師のモノ。
ただ命令を下せばいいのにそれをしないのは……彼女が自分達を信頼している証であった。
深く考えずともよい。自分達はこ
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