黎明の光が掃う空に
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震える少女は大鎌の柄をぎゅうと握りしめ。彼は心を冬の空の如く張りつめさせていく。
「明、張コウ隊は黒麒麟の道具を使ったりするか?」
「……竹笛は便利だから持たせてる」
敵がどれだけ居ても、救えなければ意味が無い。居場所を知らなければ探せない。
故に彼は、首からぶらさげた金属器を口に咥えた。
自分達はここに居るから掛かって来い、と敵に伝える。
聴こえたなら希望の光を、と助けたいモノに伝える。
闇夜を切り裂くように黒麒麟の嘶きが張り上がった。
逸る心を抑え付けたくて、明は秋斗の腕に縋りついた。震える掌の力はか弱く、折れてしまいそうな心を表すかのように。
どうか、救いたい彼女の命が無事で在れ……ただ願う事しか出来ない自分を呪いながら、子供をあやすように彼は少女の頭を撫でつけた。
†
夜の戦闘、しかも逃げながらである為に夕達は圧倒的に不利であった。
敵の数が分からない、というのが一番の問題。さらには、敵はこういった林道での戦いに慣れているようで、精兵である張コウ隊でも苦戦を強いられている。
夕に武の心得は無く、体力も無い。部隊長に背負われて守られるだけである為、こと戦闘にいたってはただの足手まといにしかならない。
馬車を捨て、円陣を組み街道を進んで行く内、その敵兵の多さと、矢での攻撃が主体であった為に遮蔽物のある林に逃げ込んだ。
張コウ隊の兵士はもう既に五十人程倒れてしまい。全速力で駆けていても追い縋る敵からは逃れ得ない。
間違いなく絶望の状況で、夕は兵士の背の上、それでも泣かなかった。
希望はあるか、と誰に問うても無いと答える。
自身の失態。予測出来なかった夕のせい。母を助けたいと願った夕の責。
どれだけ逃げたか、戦ったか。
敵は思いの外、反撃に手古摺っていると判断したのか、一旦攻勢に出るのを辞めたようだ。
静かで暗い夜の林で息を潜める兵士達は、たった一人の守るべき少女を心配そうに見やった。
「お怪我はありませんか?」
なるたけ声を抑えての問いかけに、木にもたれ掛かって休む夕はコクリと頷く。
不思議そうに、夕は周りの兵士達を眺める。一人一人顔を確認して、瞳の感情を覗き込んで。
――どうして、あなた達は不満を持たないの?
これだけ絶望的な状況であるのに、誰も彼女を責めていなかった。さもありなん、彼らは古くから彼女の母、且授と戦ってきた兵士達。誰が不満まど持てようか。
ほっと息を付いた幾人かがふらつく。
違和感があった。ふらついた兵士達には矢が刺さっている。ふらつかなかった兵士達には……一本も刺さっていない。
「……毒?」
気付いて泣きそうになった夕が告げると、冷や汗を拭った兵士は優し
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