黎明の光が掃う空に
[12/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
話だと思うよー?」
目を細め思考を巡らせ……思い至るのは“あの腹黒少女”の言葉。
限定条件下で使えるたった一度の力。人外のモノとも言える武力こそが、きっとそれだったのだろうと秋斗は考える。
――そうか……あの子を守る為に俺はたった一回の力を使ったわけだ。
詳細情報を聞けばどれだけ追い詰められていたか理解出来る。まさしくイカサマでも使わなければ逃げられない状況。
黒麒麟一人なら離脱も可能であったのだろうが……前の自分は選ばなかった。なら、どういう事か。
世界を変える事よりも、彼女の命の方が大切だった。昔の自分は彼女の事を想っていて、自身に与えられた使命を投げ出しても救いたかった。きっとそういう事。
「んー……秋兄ってさ、もしかして人じゃなかったりする?」
ドクン、と鼓動が跳ねる。真実を探る問いかけは、彼にとって一番聞かれたくないモノであった。
誤魔化せるかどうか……正直に話す気などさらさらない。誰かに秘密を打ち明けるというのは、支えて欲しいという弱さ。自分一人で立てるわけも無いが、秋斗は誰にも知らせたくない。
――天から世界への介入、それはどんな茶番だ? 好きなように世界を弄る人間、それはどれだけ悪人だ? 救えると知っている人を救わない、それはどれだけ……罪深い?
近しい話をするならば……例えばスポーツで、高校生の試合に身体能力抜群の留学生が混ざったとして、其処には広がるやるせなさがある。茶番だ、しょうがない、つまらない、くだらない……諦観や失望という毒が幾多の人々の心に広がるのだ。
行っているのが命を賭けた戦争であれば特に、弱い人間は作られた平穏にさえ疑念を持つ。自分の周りがどれだけ理解してくれようと、世界に生きる人の中には嫌悪を覚えるモノもいる。正解など無いが、彼はそんな不和を残したくなんかないのだ。
そして彼が一緒に居て楽しい華琳は、覇王は……そんなイカサマやズルに思われるモノが介入する乱世など望まない。天に与えられるだけの平穏など望まず、自身達の手で掴みとってこそ。只々皆が幸せであればいいなら、“元より桃香と手を繋ぐ事を拒絶などしない”。
華琳は大徳では無い。覇王なのだ。如何な善王でも自分が手に入れた純粋な力で躊躇いなく踏み潰し、踏み越えて自身の望む世界を作り出す。それが出来ないなら、華琳は覇王ではなくなる。
尊敬している、と彼は彼女に言った。秋斗は華琳の生き様を理解しているから……自分の事に関してだけは、嘘を貫き通すと決めていた。大嘘つきは、自身が描く平穏の為に華琳を利用し騙しているのだ。
大きな鼓動にはきっと気付かれた。その証拠に、彼女は訝しげに見つめてくる。
「分からん。普通に怪我するから多分死にもする。メシも食うし笑うし怒るし泣く。人と変わらないし、生ま
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ