黎明の光が掃う空に
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んなくだらない話に面白さを感じている自分が居る。
秋蘭と話した時、霞と話した時……その二つのような気持ち悪さや苛立ちは欠片も感じない。
自分が変わっているんだろうか、それとも彼が変なだけだろうか……答えは出ないが、悪い気はしなかった。
空を仰いでいる男を見つめる明の表情には、年相応の少女の笑み。
――うん、悪くない。秋兄なら……傷ついちゃう夕の心も癒せるかもしんない。
大切なモノを諦めさせて絶望に堕ちた時、傍に居てくれる他の大切が多いなら救われる。
自分には誰も居なくて快楽に堕ちた。夕に同調出来たから依存もした。そんな事態にはならないだろうと、なんとなく思えた。
幾分、空に溶けた彼の吐息は、切り替えの証拠。
緩い空気に浸っているのもいいが、彼は明に聞いておきたい事が山ほどある。
「まあ、色恋の話は置いておこう」
「ダーメ! 夕を大切にするって約束してからじゃないと」
「それについては無事に戻ってからちゃんと話そう。これだけは譲れん」
「むむ……お堅いじゃん。前は鈍感っぽいだけだったのに」
「ほっとけ、バカ。とりあえずだ……」
戻そうとするのを無理やり区切る。不足気味な明ではあるがそれ以上は続けようとはしなかった。
「……明が知ってる俺の事を教えてくれ」
こんな聞き方で記憶が戻るとは思えないが、秋斗は黒麒麟を演じる為に少しでも手がかりが欲しい。
どんな人間だったのかは皆から聞いている。しかし人それぞれの価値観や見方があるのだから、情報を集めるなら多いに越した事は無い。
トスッと明は彼に体重を預けた。そのまま見上げて、にひひと笑う。
「そだねー……ずっと必死で突っ走ってきた偽善者って感じじゃないかな。数回しか会話してないし、情報とかと統合しての話になるけど……いい?」
「ああ、頼む」
絶望に堕ちた明を見てから、彼の脳髄に居座る別人の記憶は為りを顰め、意識せずとも抑えられる程。故に彼の瞳に憎しみは渦巻かず、自身の情報を真っ直ぐに耳に入れて行く。
連合で初めて出会った時の印象から、些細な違和感に至るまで事細かく並べ立てられる黒麒麟の情報。
徐晃隊の異常性、黒麒麟の異質さ、掲げるモノの綺麗さに反して残酷で冷酷な戦い方と判断、主を主とせずに平穏のみを目指す将とは違うナニカ。或いは劉備軍を本当の意味で率いていたのは黒麒麟ではないか、とまで明は言って退ける。
殊更に彼の興味を引いたのは……約八千の兵士をたった一人で壊滅させたこと。
「……マジか……初めて聞いたぞ、それ。呂布に負けたのに、ホントにそんな事出来たのか?」
「あ、秋兄でも分かんないんだ。あたしも聞いただけだしねー。それくらいしないと抜けられなかったと思うから、有り得ないけど有り得る馬鹿げた
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