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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九話 反逆者の特権
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が厳しくなった時、味方が何処まで耐えられるか……。正直不安が有る」
総司令官の声は苦渋に満ちていた。今は勝っているから良い、しかし味方が負け始めたら……、混乱して決戦など無理という可能性は有る。
「何処かで打開しなければならないだろうと考えているが……」
「何か良い手が有りますか?」
クレメンツ提督が問い掛けたがメルカッツ総司令官は首を横に振った。
「或いはと思う考えも有るが何とも言えない。敵が動けば何か見えてくるかもしれんが時間が無い、おそらく二カ月もすればこちらはかなり押し込まれているはずだ」
勝機を探るには時間がかかる、問題は味方がそれに耐えられるかという事か。
「その頃になれば辺境星域も平定は間近です。そこからは状況は悪化する一方でしょう。平定が終れば三個艦隊が本隊に合流します、ローエングラム侯は一気に押し寄せて来る」
ファーレンハイト提督の言葉に皆が頷いた。なるほど、エーリッヒが勝てる可能性は二パーセントと言う筈だ。思った以上に状況は良くない。
「私の艦隊を動かすというのは如何かな、それならば兵力で圧倒出来ると思うが」
リッテンハイム侯が皆の顔を見回した。リッテンハイム侯は旗下の三個艦隊をブラウンシュバイク公との仲の悪さを偽装するためにここまでは動かしていない。
「小官もそれを考えていました。ここぞというところで侯の艦隊を動かす。それによって戦局を変える……」
メルカッツ総司令官の言葉に皆が頷いた。
「問題は何処で使うかですな」
「それについては小官に考えが有ります」
クレメンツ提督の言葉にエーリッヒが答えると皆の視線がエーリッヒに集まった。エーリッヒの表情は厳しい、かなり危険な策のようだ。
「ただ、その前に或る作戦を実行させて下さい。その方がより効果が大きくなる筈です」
皆が顔を見合わせた。或る作戦? 違うな、危険はこちらか。嫌な予感がしてきた。地雷原の上で飛び跳ねている様な感じだ。
「その作戦とは?」
「敵の後方に出て攪乱を行いたいと考えています」
「攪乱か」
「はい、それが出来れば敵を苛立たせ、その侵攻を遅くする事が出来るでしょう。その分だけ味方の動揺も少なくなる筈です」
「……」
皆が訝しげな表情をしている。そこまで効果が有るのか、そんな表情だ。エーリッヒが微かに笑みを浮かべた。寒い、背中をヒヤリとしたものが走った。
「具体的にはオーディンを狙います」
“オーディン!”という声が彼方此方から上がった。予感が当たった、嬉しくない……。
「詳しく話を聞こうか」
メルカッツ総司令官の声が重々しく響いた。
帝国暦 488年 6月 10日 ガイエスブルク要塞 アルベルト・クレメンツ
メルカッツ総司令官の元を辞すると俺、ファーレンハイ
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