■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆生きる意味
第六十一話 生きる意味:ミズキ
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出して高いわけではなかった。
彼が優れていたのは、好奇心と知識欲だったのだ。彼はどこまでもいろいろな物に興味を示した。例えば彼が小学校4年のころ、誕生日プレゼントに欲しがったのは顕微鏡だった。彼はその顕微鏡で校庭の石碑にへばりついた苔を見た。水をかけると、苔から様々な微生物がうじゃうじゃと出てきて、彼はそれらをスケッチするのを何よりも楽しみとしていた。
しかし、そんな普通の生活も中学校卒業の時に一変した。彼の父親――地元では有名なマフィアの、それなりに高い位置にいた人物――が、派閥争いに巻き込まれたのだ。マフィアに属してはいたが、彼は父親として尊敬に値する人物だった。すなわち、子供と妻を何よりも愛していた。だから、彼は妻と――愛するがゆえに――離婚し、単身派閥争いへと乗り出していった。瑞樹の父親は、妻子が敵対する派閥に人質に取られることを恐れたのだ。それは派閥争いが苛烈を極め、瑞樹の家に敵対勢力が乗り込んできた翌週のことだった。
瑞樹は母親の姓『翠川』を名乗り、遠くの専門学校へと進学した。そこでの彼の努力は涙ぐましいものだった。彼はディベートなどの大会に進んで参加し、様々な賞を勝ち取った。賞を得れば名前が残る。そしてそれは地元で息子を案じている父親に対し、無事に過ごしているというメッセージを送ることとなるのだ。彼は努力の甲斐あって飛び級試験に合格し、編入試験を経て帝工大の一年生となった。
彼は大学でも勤勉だった。他学部履修(帝工大は工業単科大だが『大学間複合学部履修制度』という制度があり、他大学で文系教科の授業を受けられた)を行い、文理問わず様々な知識を身につけた。彼は更に実力を伸ばすために留学をしたいと考えたが、そこで問題が生じた。彼はそれを可能にする資金を持っていなかったのだ。仕方なく彼は一年間大学を休学し、建築の知識を生かして土木系の会社に一年間という契約で就職した。
そして、工具類を現場に運ぶ最中、彼は突然の心臓発作に遭い――
*
「――事故で身体の自由を失って今に至る、というわけだ。参考になったか?」
「なんていうか、ミズキさんって、わたしたちが想像する以上に――」
「――かなり壮絶な人生を――」
「――送ってきたんだね」
マルバたち三人はため息をついた。ストレアも言葉を失っている。
「それでどう? 何か分かった?」
アイリアがミドリに尋ねるも、ミドリは首を振った。
「いーや、順番に思い出して行っただけだから、これ以上のことは何もわからん」
「彼の信念とか、何かないの?」
「信念? そうさなあ、うーん……多分、『後悔するな、やれることをやれ』ってところだと思う」
「確かに、全力で生きてきたって感じの人生だったみたいだね。こんなとこ
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