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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆生きる意味
第六十一話 生きる意味:ミズキ
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 一節を口ずさみながら現れたのはマルバだった。シリカも彼の後に続いて、アイリアたちと同じテーブルにつく。
「トップテナーしか歌えなくて悪いね、他のパート知らないんだ。――そういえばミズキはこの歌を妙に気に入ってたね。歌詞は縁起でもないけど、リズムが楽しいって言って。ミズキの話?」
「そうそう。見かけによらず妙に教養ある人だったよねって話」
「ああ、彼はすごかったよね。彼の話を聞いて、現実に帰ったら真剣に勉強しようって初めて思ったもん」
「わたしもです! ミズキさんの話はいつも面白かったですよね」

 マルバたちも口々にミズキを褒めたので、ミドリは混乱してしまった。
「ちょっと待ってくれ。ミズキってそんなに知識豊富な人物だったのかよ……」
「あれ、疑うの? まだ続ける?」
 アイリアが笑いながら言うと、ミズキは苦笑して認めた。
「わかったわかった、認めよう。そうだな、これだけの証拠があるんだ。認めないわけにはいくまい」

「甘いよ、甘すぎるよミドリくん。蜂蜜をかけたかりん漬けより甘いよ」
 しかしアイリアは気取って否定した。
「彼が私達に語った話はなにも百人一首やシェイクスピアばかりではなかったのだよ。自然科学についてもいろいろ教えてくれたんだ。数学やコンピュータはあんまり教えてくれなかったけど、私達はもう高校範囲までの科学はひと通り勉強しちゃったよ。彼の話を聞くだけでね」
「わ、わたしはみなさんほどしっかりは理解できませんでしたけど。それでもだいぶいろいろ分かりましたよ! 高分子の話は聞いてておもしろかったなあ。ビニロンの話が一番印象に残ってます」
 現実の年齢ではまだ中学生のはずのシリカに、高校分野でもそれなりに高度な高分子化学を教えるのは至難の業だろう。シリカの理解力が高かったということもあるだろうが、なによりミズキはそこまでの能力を持っていたのだ。
「そこまでなのかよ!?」
「そう、そこまですごかったんだ。というわけで、彼に学ばない手はないんじゃないかな? 私も興味あるしね、現実世界のミズキが一体どんな人だったのか。本人からもいろいろ聞いたけど、ミズキについては知れるだけ知っておきたいもん」

 そして、ミドリに視線が集まった。ミドリも観念し、ミズキの記憶に意識を集中する。
「分かったよ、順番に思い出してみる。ちょっと時間かかるから待っててくれよな。ええと、どこから思い出したものだろうか――」
 彼は語り始める。かつてこのSAOに存在した、英雄の物語を。





 そう、彼は一言で表すなら『どこにでもいるレベルの天才』だった。多段階式大学志望者共通一次Sランク試験の成績では、偏差値にして61だった――といえば彼のだいたいの学力は伝わるだろう。もともとの記憶力や理解力も高かったが、それでも突
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