■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆生きる意味
第六十一話 生きる意味:ミズキ
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に比べて圧倒的にたくさんいろんな経験をしてきて、いろんな知識を持ってて、教養もあるからだよ」
ストレアが驚いて声を上げた。
「ちょっと待ってよ、ミズキってミドリよりも乱暴なしゃべり方だったって聞いたよ。ミドリだって本来は私みたいな標準のMHCPの言語ライブラリーに従った丁寧なしゃべり方のはずなんだけど、それが粗雑なしゃべり方になってるってことは、ミドリはミズキの言語野を通して言葉をしゃべってるってことだよね。言語野に染み付くほど昔から粗雑なしゃべり方をしてきた人が、そんな教養ある人物とは思えないんだけど」
「……いや、でもちょっと待てよ。そういえば、喋ってると妙に教養ありそうな単語が出てくることがあるな。この前、キリトたちと話してた時もそうだった。近代とかウェーバーとか。たまに誰かの格言がふっと思い浮かぶこともあるし」
アイリアはちょっと笑って言った。
「そう、そういうこと。ストレアさんはミズキを知らないからそう思っても仕方ないかもだけどね。ミドリはもっと詳しく知ってるんじゃないの? ミズキの記憶は思い出せるんでしょ?」
「あー、悪いが、『思い出そうとしないと思い出せない』んだ。取っ掛かりがないと参照できない」
「ふーん。それじゃその『取っ掛かり』を用意しましょうか。これ、なーんだ」
アイリアが一枚のカードを取り出した。ちらっと見せると、ミドリは衝動的に一連の文句を唱えた。
「夜をこめて、鳥の空音は謀るとも、よに逢坂の関は許さじ――ってこれ、百人一首か?」
「はい、次。これは?」
「今来むと言ひしばかりに、長月の有明の月を待ち出でつるかな――おおう、なんかすらすら出てくる」
「それじゃ、次。『あなたふと、今日の――」
「『あな尊と、今日の尊さや、昔もはれ、昔もかくやありけむや、今日の尊さ、あはれ、そこよしや、今日の尊さ』――うわっ、これはなんの歌だ、ライブラリーに無いぞ!?」
「まだまだ。次、When daisies pied and violets blue――」
「――And lady-smocks all silver-white. これは……シェイクスピアか?」
「And cuckoo-buds of yellow hue?」
アイリアは嬉々として続きを求めたが、今度はそれに答えたのはミドリではなかった。
「Do paint the meadows with delight, The cuckoo then, on every tree, Mocks married men; for thus sings he! ――面白そうな話をしてるじゃない? シェイクスピアの"When dises pied"だよね。懐かしいなあ」
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