第14話 下らない昔話
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流された。
「わしはのォ、上級生のシゴきなんぞ認めた覚えはあらへんぞ!」
バキッ!
「何が、"自分もされてきた事"や!わしゃ、そんな事は知らんぞ!わしが知らんいう事はやな、そんな事はなかったんじゃい!」
ドカッ!
「よくもそんな嘘をついて、わしの淳二を……」
ボコッ!
監督にしこたま蹴られて、身体中に痛みが広がっていくのを感じながら、小倉は滑稽だな、という感想を抱いていた。認めた覚えはない?確かに、監督は"教育"を認めちゃいなかった。ずっと黙認はしてきたが。そんな事は知らない?そりゃそうさ、先輩のシゴきの罪は、だいたい俺たち下級生が身代わりになって被ってきたんだからな。でも、監督にだって現役時代同じような経験はあるだろうし(昔からあった風習でなきゃ、今も不文律になんかなってない)、ハッキリと耳にしてこなかっただけで、実情がどんなもんかが分かってなかったはずがない。それが今になって、何故こんな風に、これまで黙認してきた事に対して全力で目くじら立ててくるのかと言うと、やはり最後の一言が本音なのだろう。自分の息子が被害に遭ったからだ。他人の息子が多少ボコボコになった所で、この狸は「それもまあ教育のうち」と寛大に流す事ができる。だが、自分の息子となれば話は別。ただそれだけの話なのだ。二軍の9番打者である息子を、「雰囲気がいい」「元気がいい」「何かを持ってる」などなど、意味不明な理由づけで無理矢理一軍に昇格させた親バカの考えとしては、むしろ自然なようにも思われる。
腐ってるな。小倉は内心で呟いた。
蹴り疲れた監督は、息を切らしながら小倉を見下ろしていた。自分が蹂躙される立場であるにも関わらず、小倉はその姿を、非常に醜いと感じた。
「なぁ、わしが何の証拠もなくこんな事言うてると思うか?ちゃんと聞いたんやで、3年、2年にもな。ほいたら、そんな事は知らん言いよったわ」
小倉にとっては、同級生や先輩が、自分をトカゲの尻尾として切り落としてくるのは予想できていた。正直にみんな後輩をボコってました、と言った所で、自分のように制裁を受ける人間が増えるだけ。だったら、全体の被害を最小限に食い止めた方が良いというのが、"チームの論理"である。自分は、"最小限の被害"として、全体から切り捨てられたのだ。その覚悟はできていた。元より、一年に対して生ぬるいのなんのと、特に同級生からの不満を溜め込んできた自分が、皆に庇ってもらえるなどと期待してもいなかった。
「一年もなぁ、お前以外にそんな事された事ないって言いよったぞ!」
「…………」
しかし、さすがの小倉も、この一言に対しては視界がぐにゃり、と歪んだ心地がした。自分を快く思ってない先輩や同級生が、自分を切り捨てるというのは分かる。だが、一年までもが自分だけを
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