暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
勝ち上がる者がいれば、脱落する者だって存在する
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寂しがり屋で友達を欲しがってるってことを。本当は人を小馬鹿にする自分が嫌っているってことをね」

 「何よ、それ」

 「だけどなかなか思うようにならない。だからもちろんストレスが生まれてくる。それを解消するために、君は殺し屋をやっているんだろ?頭に銃弾を撃ち込めば人は簡単に死ぬのに、君は人を徹底的に(しいた)げる。そうすることで君はストレスを解消させているんだ。特に男を使って、ね」

 「もうやめてよ……」

 「君は中学2年生まで父親に凌辱されてきた過去を持っている。だから男を強く強く憎んでいた。男に好かれるのが怖いんだろ?傷物にされるだけだと思っているから。そんな過去と素直になれない自分に対する不満が相まって人を破壊し続ける。もう殺人鬼に近いよ」

 「やめてって言ってんじゃん!」

 甲高い鈴奈の叫びが木霊するが、大河内の口は留まる事を知らない。

 「でも安心してくれ。俺なら君を幸せにできる。君の望む友達を作ることだってできるよ」

 「もう、いいから……」

 「男が憎いなら、俺以外の男を俺が殺してみせよう。全世界の男を殺すのは難しいけど、君の周りにいる男は絶対殺せる」

 「そんなの……いい」

 「そして俺は最後に君を抱く。殺し屋の仲間としてではなく、愛を培う恋人として」

 「いやぁ……」

 気付けば鈴奈は銃を落として泣いていた。身体に力が入らない。過去の出来事が脳裏を掠め、背筋がゾクゾクする。

 突然大河内が自分を押し倒してきても、何の抵抗も出来なかった。そうして自身の唇に大河内のそれが近づいてきたとき、時は動き出した。

 パアアン、という聞き慣れた音と同時に大河内の肩口から血が飛び散る。彼の重みが退いたのを感じながら、鈴奈は赤い目を銃弾が飛んできた方に向け、息を飲んだ。

 「……暁」

 暁ケンジが右手に握った拳銃を大河内に向けて立っていた。その目に普段のオドオドした色はなく、完全に大河内を殺すシステムと化している。

 そんな彼の隣にいた宮条と法城が鈴奈の方に走ってくる。「大丈夫?」と言って身体を起こしてくれた宮条に、鈴奈は黙って頷く事しか出来なかった。

 「ねえ、これどういうこと?」

 震える唇から吐き出された情けない声。しかし宮条はそれに触れず、視線を対峙するケンジと大河内に向けた。

 「この潰し合いが終われば全てが終わる。そういうことよ」
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