暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
人間の殺意は時に向ける先を間違えてしまう
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ケンジは震える足を動かして、要の元までやって来た。意識が崩れるようにしてしゃがみ込み、要の顔を見る。そして彼がまだ息をしている事に気付いた。
「……田村、君。田村君!」
半開きの目には生死がそれぞれ半分映っているようだった。僅かに開いた口から一筋の血が流れ、整った彼の顔を汚している。
「……おれも、バカだよなぁ……。うたれて、正解だっての……」
今にも消え入りそうな要の声。ケンジはどうすればいいか分からず、何故か彼の腕を掴んだ。そうすると要の顔は今度こそ優しげな色を帯びた。
「おい……手ぇ掴んで、どうすんだ……?」
その瞬間、糸が切れたゼンマイのように彼の腕から意識が失われた。今にも閉じてしまいそうだった目は、すでに瞼によって塞がっている。急に重たくなった彼の腕を感じ、それがどういう状態を指しているのかを認識したケンジは、声にもならない声を街に響かせた。
まるで今という現実を作り出す世界そのものを廃絶してしまいたいとばかりに。
*****
数分前
敵の数は残り4人。対してこちらは3人。一チーム4、5人が揃っていた筈の自分達の戦力もついにここまできてしまった。赤島は焼けるように熱い右手を庇うようにして敵の凶刃を避け、声を張り上げて愚痴を漏らす。
「おいお前らよ、自分達が世の見せ物になっちまってるかもしれないってこと、分かってのか?俺はそんなの真っ平御免なんだが」
「ハッ、今更なにを」
赤島を追撃する裂綿隊の一人が顔に笑みを貼り付けながら言った。
「つかよ、こんな殺人三昧の映像を公に流せるわけがねぇだろうが!ちったぁ頭使えや!」
「お前こそ脳みそ動いてんのか?俺らの大将は未来を自分色に染めちまう怪物なんだぜ?」
額に汗の雫を溜めた無精髭の殺し屋は相手の攻撃を紙一重に回避する。そのとき視界の端にある光景が映った。
――暁?
仲間の暁ケンジがナイフを落として項垂れた少年にゆっくり近づいている。どうやら双方に敵意はないらしい。先ほどから聴覚がケンジの切実な言葉を拾っていたのは分かったが、まさか説得に成功したのか。
――いや、違う!
赤島の思考がいつも以上のスピードで回転して解を導き出す。
――あのナイフ野郎、笑っていやがる!それと制服の裾に合計4本の殺傷用ナイフ!
赤島は千里眼の持ち主でも異形の血を体内に宿す人間でもない。ただ、長年の戦闘経験と敵の心理を読み取る力が、彼を人間以上にたらしめていた。
左手に持っていたナイフを放り、懐から拳銃を取り出す。それを少し離れた標的に定めると容赦なく引き金を引いた。それを二発繰り返し、そのうち一発が相手の肺に潜り込んだのを確認すると、赤島は左手を迫り
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