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横浜事変-the mixing black&white-
人間の殺意は時に向ける先を間違えてしまう
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?それはつまり君を評価してくれているってことだし、君を意識してるってことだ」
「……!」
「それだけで幸せだと思わない?誰かから親しくされなくても、君はちゃんとクラスで生きてる。僕みたいな得体の知れない性質を持つ人じゃないんだ!」
その言葉に要は目を丸くしたまま硬直していた。今彼が何を思っているのかは分からない。だがケンジは自分の考えをちゃんと伝えられた事に安堵していた。親しくもない相手にここまではっきりと物事を伝えるのが久しぶりで、心臓が嫌なくらいにバクバクしている。
――田村君のナイフを躱すときよりも緊張している。……やっぱり僕は変わっている。
心中で自分の異端性を思い知りつつ、要の目をじっと見つめた。すると要は我に返った様子で肩をビクッとさせ、それから僅かに口元を緩ませた。
「……なるほど、そういう考えもできるし、自分で言うのもなんだがそうかもしれない。俺は誰かと話したいがために何事も積極的に取り組んだ。それが今になって生かされるなんて、皮肉な話だ」
「今頃だっていいじゃないか。君の言う通り、この世界からは逃げ切れても罪からは逃げ切れない。それでも後ろばっかり見ててもしょうがないんだ。だったらさ、これからでもいいから頑張ってみようよ」
ケンジは必死ながらに訴えた。それは自分にも言える事であり、決して綺麗事ではない。だが、要との殺し合いが何も生まないと知っていたからこそ、こうして涙を流して説得しているのかもしれない。
足を一歩前に出し、もう片方をさらに先へ出す。ゆっくり、ゆっくりと要に近付いていく。
要はすでにナイフを足元に落としている。今こそ彼の手を取ってここから離れるチャンスだろう。赤島には目で合図すればどうにかなる筈だ。
「帰ろう、僕らが在るべき場所に――」
だが、暁ケンジという少年はやはりこの世界を甘く見ていた。
最初はどこからか発せられた乾いた銃声が聞こえた。次いで目に飛び込んだのは、眼前の少年の肺辺りから飛び散る赤黒い液体で――
「たっ……」
田村君、という簡単な単語すら出てこなかった。身体があまりの衝撃で固化し、瞬き一つ取れない。
一度もシャットアウトしなかった世界で、少年は田村要が倒れていく光景をただただ見つめる事しか出来なかったのだ。
*****
時が永遠のように感じるとはこういう事なのかと、ケンジは切り離された思考の一幕で呟いた。実際は1分程度しか経っていないのだが、彼にはそれが半日か1週間を過ごしたように思えて仕方がなかった。
「……たむら、くん」
精一杯の一声は弱弱しく、自分のものとは思えなかった。愕然とする中で口が開いたままだったために、口内がすっかり乾ききっていたのだ。
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