暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
物語は一人の人物が思い描く色に染まっていく
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こちらを見ている。

 「……いや、見てるんじゃない。あたし達をリポートしてる?」

 「バカな……」

 大河内の魂が抜けたような声が僅かに聞き取れた。そちらを向くと、彼は携帯を持った腕をブラリとしながら項垂れていた。初めの狂気さはどこにも感じられない。

 『茶番は終わりだよ、殺し屋諸君。ああ、裂綿隊の面々も含まれるよ。君達の姿は世界に筒抜けだ』

 そこで多地点通話は終了した。

 今、局長は何を思っているのだろうか。白い筒状の光を浴びながら鈴奈はふと考えた。

 哀れな自分達を嗤っている?実は申し訳なく感じている?全ては冗談で、ここから真実を暴こうとニヤけている?

 どれでもないな、と彼女は結論付けた。電話越しでしか接触した事のない人物だが、彼女には分かった。局長と呼ばれる男は自分の欲する物に一図な人間で、目的を完遂させる事だけしか考えていないという事を。だからこそ人を殺すだけの組織を作れたし、こうして仲間を裏切れる。

 結局のところ、自分には取るに足らない存在だから。

 「……笑わせてくれるな」

 そう呟いたのは彼女ではなく、今まで茫然と立ち尽くしていた大河内だった。その表情はどこか俯瞰的で、一見すると平静を保っているようにも感じ取れる。

 しかし彼が壊れている事を鈴奈は知っていた。

 「茶番は終わり?だからなんだ。だったらどうしてアンタは俺が無実の一般市民を殺し続けたのを止めなかった?殺し屋としてではなく、人殺しとしての俺を止めなかった?」

 「そんなの、今ジジイが言ったじゃん」

 「……何?」

 こちらに振り返った大河内に、鈴奈はさもつまらなそうに言葉を紡ぎ出した。

 「アイツは自分に利益のあることにしか興味がないの。だからアンタは好きなだけ人を殺せたし、今こうして裏切られた。そんな簡単なことにも気付けないなんて、アンタ殺し屋失格ね」

 ――ま、殺し屋の定義が何なのかは知らないけど。

 心中でそう付け足し、彼女は一息吐いた。今の状況が現実なら、この時点で鈴奈達は投降せざるを得ない。これ以上殺し合いを続ければ罪は重くなる一方だ。いくら自分に自信があるからといって自分の首を絞める行為をするほど、鈴奈は馬鹿ではない。しかし――

 「っ!?」

 突然増幅した殺気を掴み取り、彼女は咄嗟の判断で横に転がった。その直後、自分がいた位置をナイフの刃が通過していった。

 「……ちょっと、アンタ」

 態勢を立て直した鈴奈が低い声でそう言った。ナイフを突き出したポーズで止まっていた大河内がゆっくりとこちらに顔を向けて、酷薄な笑みを浮かべた。

 「いやぁ、本当に参った。この展開はさすがの俺も予想していなかったよ。でもさ、ここまで来たら戻れな
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