第三話 『出会いと別れ』
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俺はそういい放ちながら、走り幅跳びの要領で踏み切ると、ゾンビの顔面に強烈な蹴りをお見舞いする。
ガスン!!
「うぐあぁぁぁ!」
俺の全体重を乗せた跳び蹴りを喰らったゾンビは二メートルほどふっ飛んだ。唸り声をあげながら体をびくびくと痙攣させていたが、やがて動きは止まり、ゆっくりと沈黙した。その様子を確認すると、倒れている谷川のもとへと向かった。
「大丈夫か谷川?立てるか?」
「ああ……。なんとかな……」
そう言う谷川だが、よく見れば数ヵ所の噛み跡があり、出血量もかなりだ。それに……
「谷川。この学校の様子を見るに、感染者がどんどん増えてるように見える。どうして感染者が増えてるのか分かるか?」
薄々感ずいてはいたのだが、悟られないように聞いてみた。
「おい雲母。お前ならもう気づいてるんだろ?奴等は、噛みつくことによって、体内のウィルスを獲物に感染させるんだ」
「谷川……お前……」
「分かってるよ。俺ももう感染してる」
俺がこの学校に入ってから、谷川とこんなに話したのははじめてだ。なのに、何故だろう。心の奥に感じたことのない痛みが走り、目の奥が熱くなってゆく。
「そんな顔するなよ雲母。なあ。最後に俺のお願い聞いてくれないか?」
「……なんだ?」
頼む。言うな!あの言葉だけは言わないでくれ!俺は心にそう願った。だが、日頃の行いが悪かったせいだろうか。彼から注がれた言葉は、一番聞きたくない言葉だった。
「俺は、最後まで人間でいたいんだ。奴等見たいにはなりたくない。だから頼む。俺を、殺してくれ」
そこから先はどんな会話をしたのか覚えていない。ただ、廊下に転がっていた鉄パイプを谷川へ降り下ろそうとした瞬間、彼から聞こえてきた言葉だけは鮮明に覚えている。
「ありがとう」
初めて俺に見せた最高の笑顔と共に。
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