第三話 『出会いと別れ』
[1/2]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
『続いてのニュースです。先月30日、アラビア半島のサウジアラビア南部でWHOが関知していない特殊な病原菌が発見されました。発見は、サウジアラビア、ナジュラーン在住の30代の男性がサウジアラビア警察によって拘束されたことにより発覚しました。サウジアラビアではすでに20000人にも及ぶ感染者が出ているとのことです。国際連合による報道管制の影響でその病原菌がどのような症状を人間に起こすのかはわかっていませんが、狂犬病の一種ではないかと言うことですWHOはこれをうけて……』
「はあ……はあ……はあ……」
俺は、朝に見ていたニュースの内容を思い出しながら、学校までの道のりを全力で走り抜いた。陵太の言う通り、襲ってきたあの男はまるで映画に出てくるゾンビのようだったが、一体どこからその病原菌が日本に入ってきたのか。最初の感染者が発見かれてからまだ10日程しかたっていないのに、もう感染者が日本に現れているのだ。
いつもは郡をなして走っている車も全く見当たらない。交通機関の麻痺状態を考えるに、おそらくこの町はもう感染者だらけなんだろう。などと、さっきの男のせいですっかり目覚めさせられた頭で考えながら走っていると、学校の敷地のすぐ外まで来ていた。
「お、おい……これ…本当に俺のいた、あの神河工業なのかよ……」
俺がこんなにも驚愕する理由。それは、この学校が作られたのが三年前だということだ。にもかかわらず、今のこの学校はまるで廃墟のようになっているのだ。
「何をどうやったらこうなるんだよ……」
だが、今はそんなことを気にしている余裕はない。この学校の音楽室には俺の親友と他科の生徒たちが今も閉じ込められている。
「クッソー……。まるでどこぞのホラー映画じゃねーかよ」
俺は深く深呼吸を数回繰り返し、自分の拳を強く握りしめた。
「よし。いくか!」
校舎のなかはいつもの学校からは考えられないほどひっそりとしていた。その様子が逆に俺の恐怖をあおり、額に冷たい汗が伝う。神河工業高校は、教務科棟、実習棟、教室棟の三つに別れていて、全階で四階ある。そのうち、音楽室は教室棟の最上階だ。俺は、音楽室に通じる階段を一段一段静かに登っていった。そして、二階の階段に足のせかけた、その時だった。
「うあぁぁぁぁぁ!!」
「ッ……!」
今のは間違いない。悲鳴だ!
そう考えた時にはすでに体が動いていた。長く続く廊下を無我夢中で走っていくと……いた!あれは……うちの科の人間だ!
「谷川!!」
「雲母!?雲母か……うぐっ!頼む助けてくれ!ぐあっ!」
「待ってろ!」
谷川は、陵太が言うところのゾンビに、覆い被さられるような体勢で噛みつかれていた。かなりの出血だ。
「谷川をはなしやがれこのクソヤロウ!」
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ