第2話 天狗、思い知る
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「さて、早速だがお前には今の国の情勢を把握してもらう」
景虎様から、今この国に迫る危機について聞かされた。
最近、敵対する国人の動きが活発で、戦のため兵を動かしているらしい。
景虎様は如何にして迎え撃つか俺に尋ねた。
無い知恵を絞り、策を上げるが景虎様は難しい顔をしてその案では不足だと告げ、何が不足か教えてくれた。
景虎様の意見を基に、俺は必死に考え、案を上げる。
日が傾き始めた頃、景虎様は笑みを浮かべて「よし」と頷き、俺を置いて部屋を去った。
暫くすると、入れ変わるように一人の武将が入ってきた。
兎のような耳をつけ、甲冑に身を包んだその人物は「宇佐美定満」と名乗った。
「颯馬君の策は景虎様に教えてもらったの。よく考えられた策だったの」
武将の中にはこのように柔らかい物腰の人物もいるのかと驚いた。
彼女はよく考えられた策と褒めてくれたが、これは景虎様の助言の元に作られた策なので厳密に言えば俺の策ではない。俺が最初に考えた策は穴だらけでその欠点をすべて景虎様に指摘され、助言を得て作った。殆んど景虎様の策と言った方が正しいだろう。この策がよくできているのなら当然だ。
「それは……光栄です。して、景虎様は?」
「景虎様なら……弥太郎と一緒に兵を連れて……戦に出かけたの」
え……?
「戦……」
「景虎様はこの城の城代で……戦の時はいつも自ら先頭に立つの。今日の戦は、颯馬君の策があるから大丈夫だって言ったの」
「では、景虎様は俺の考えた案で戦に……?」
宇佐美殿は小さく頷く。
しまった……あの策は……敵を逃がす可能性が高い……。
それ以前に、あの策では圧勝なんて不可能だろう。所詮は素人が考えた策。如何に戦が巧みな者の知恵を借りても限界がある。
例えるなら、巨大な物の怪の前では何人力を合わせてもその力の差は覆らないようなものだ。
所詮は素人は素人だという事だ。
「なんで、俺の策で……」
頭が真っ白になるとはこの事か……。
体から力が抜け、まるで魂を抜き取られたかのようにその場に座り込む。
景虎様や大勢の兵の命が……。俺が……奪ってしまった……。
「颯馬君が考えた策だからなの……」
「景虎様は……颯馬君を試したの……」
そんな、危険すぎるのに……。どうして?
「景虎様は……颯馬君が気に入ったと思うの。だから、あの策が正しい事を証明して、颯馬君を皆に認めさせようとしているの」
「私は景虎様の所で軍師をしているの。あの策は私から見ても良くできていたから……大丈夫だと思うの」
「そうではなく……!」
素人が少し考えただけの策で……戦に行くなんて。あの策の通りに戦が進むなんて思えない……。
「宇佐美殿、お願いがございます」
「何?
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