第1章 群像のフーガ 2022/11
8話 反撃の意思
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士と同様に人型であり、スキルモーションが一致するのである。それでも状況は分が悪い。フロアボスが振るう刀だけあって威力は高く、スキルアシストに任せっぱなしの動きでは弾かれてしまう。スキルに合わせて自身も動きながら速度と威力を上乗せしなければならない上に、その場に即した判断もしなければならないことも考慮すれば、多大な集中力を要することになるだろう。動きがブレてスキルアシストから逸れてしまえば、スキルが停止して隙が生じることだって在り得る。
何度でもやり直せたβテストでも、デスゲームと化した正式サービスでも、これほどに集中力を要した時間はなかっただろう。次第に慣れて刀の軌道をより明確に予測できるようになり、しかしそれに反して精神が摩耗していくのを強く実感できた。一振りごとにレイジハウルの重量が増すような嫌な感覚に顔をしかめながら剣を振り続け、ついにその時が訪れた。
「しまっ………!!」
毒づくキリトの視線の先、上段に構えられたコボルド王の野太刀が途端に半円を描いて下段に流れたのだ。同じモーションから上下ランダムの攻撃が行われる単発技《幻月》。振り下ろしと予測していたキリトは《バーチカル》をキャンセルしようと右手を強く引き、それによってスキルが停止して硬直を強いられる。
キリトを援護しようと前に出るも、突如として視界が大きく横に流れて床に打ち付けられた。遅れて伝わった衝撃が攻撃によるものだったと理解したのは、長柄斧を振りかぶった後の姿勢で立っていたセンチネルを視認してからで、同時に6回目の湧出が起こっていたのだと理解する。遅れてキリトが直撃を受けて宙に巻き上げられ、アスナとヒヨリが突っ込んだ。キリトに追撃を仕掛けさせないために隙を作ろうとしているようだが、しかし《幻月》は技後硬直の短いスキルで、コボルド王は既に刀に赤いライトエフェクトを漲らせていた。そしてあのモーションは《緋扇》の………
「ぬ……おおおッ!!」
赤い輝きを宿した刀が両名を襲う直前、野太い雄叫びが空気を震わせた。
もとより身長の低いヒヨリはさておき、アスナの頭上を掠めるように巨大な刃が緑色の軌跡を描きながら野太刀に叩き込まれる。およそ手で振れるような武器から出たとは思えない激しい音を打ち鳴らし、コボルド王は大きくノックバックするも、斧を振るった魁偉な大男は革サンダルで踏ん張り、1メートルほどの後退で留まる。
その容貌を見間違えるはずもない。助太刀に入ったのはB隊リーダー、エギルだ。さらにその後に続くように、湧出した取り巻きに向かっていくプレイヤーの姿が現れた。数が多いというわけではないが、それでも取り巻きには対応できる人数だ。やや離れた位置に落ちたキリトと俺に見えるように、肩越しで笑う。
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