温泉旅行(中編/2日目/告白)
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と思っていれば背中から手が離れて、掛け布団が捲られ恋也が俺の布団に入ってきたのが分かる。
そしてすぐに背中合わせになってお互い無言になる。
気まずい……。
「れ、恋也?」
「丁度俺も背中冷たいから、兄貴に暖めてもらおうと思って」
結構無邪気な感じに言っているのが分かって、首だけ動かすと後ろからでも良く分かるぐらいあちこち視線を彷徨わせて、最終的には下に下ろしていた。
そんな姿を一瞬小さい頃の恋也に重ね、思わず口元が緩む。
振り返るのをやめて近くに置いてあったリモコンで部屋の電気を消し、何となく気まずいと思う沈黙が続いてから口を開く。
「俺が、恋也と此処に来た理由……、大して良い理由でも悪い理由でもねぇけど、ただ俺と恋也は中学の時修学旅行に行ってねぇから……まぁ、それのやり直しみたいなもんだ」
これ以上は言えないと思い黙っておこうと決めたが、どうしたもんか。
先に言っておくが、言おうと思って言ったわけじゃない。
「恋也と純粋に出かけてみたかった」
呟いたことに俺が赤面するのか、恋也が赤面するのか、どっちも無表情なのか、俺には分からないが好きなように想像してくれ。
ただ、俺自身は自分の言ったことに凄く恥ずかしさを感じている。
「んな訳ねぇよ、最後のは冗談、じょうだ……」
ワザとはぐらかすように言って恋也の様子を伺おうとしていたのだが、恋也はとっくに寝ていて俺の話を聞いてすらいなかった。
その後俺が聞かれていないことに安堵し、睡魔が襲ってきたので素直に従って眠ったのは俺自身しか知らない事であると信じたい。
**
此処での告白は「恋愛」ではなく「理由」の告白だ。
何故俺が恋也とこの二階堂旅館に来たのか。
「理由」としての告白は恋也は寝ていて聞かれていなかったのだけれど、まぁ、とりあえずは特に何もないだろう。
本当に恋也は聞いていなかったのかは、俺は知らない。
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