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温泉旅行
温泉旅行(中編/2日目/告白)
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に少し動かせば、恋也の首筋に虫に噛まれたような赤いものが付いていた。
本人は隠しているのか隠していないのかは分からないが、気にしないでおこう。
一瞬固まって再び顔を逸らすと、居た。

「あっ……」

窒息死してしまいそうな程、声が出なく、そこに居る奴は俺の見知った格好だ。
ボブカットに和服、そして手招きをしながらゆっくりと歩いてくる。
幼い顔つきで、黒髪、肌の色は色白でどう見ても人間ではない、オーラを出している。

『こっちにおいで』

手招きをしながら歩いていた筈なのに、気が付けばもう目の前に居て、ゆっくりと右手を伸ばして俺の頬に指先が触れた瞬間――パァンハリセンで木製の机を叩いた様な音がしたと同時に、左頬に痛みが走り、視界が歪んでいるのが良く分かる。


「――……?」

何が起きたのか全く分からない。
数回瞬きをしていれば頬に何か温かいものが流れていくのが分かるが、暗かったはずの部屋は明るく、さっきまで無表情だった恋也はどこか心配そうな顔で俺を見下ろしていた。
ただ自分で分かるのは息遣いが荒く、変な汗を掻いているという事。
ゆっくりと体を起して、息を整えようとしていれば恋也に「何か買って来てやろうか?」と聞かれたが、1人になってしまうのが嫌だったの首を横に振り、また仰向けに横になる。

「俺、どうなってたんだ?」

恋也が居る右側に視線を向けて尋ねると、恋也は安堵しているのか肩の力が抜けているように感じる。

「俺が仰向けにして、理由を言えって言って数秒経ってから急に気を失って、というより何かにうなされていた」

だから叩いて俺を起したのかと納得を1人でしつつ、俺がうなされたのは当然、ボブカットを見た時ぐらいだろう。
この旅館に憑いているのか俺に憑いているのか。
それよりも寒気を感じるのは、汗が引いたからだろうか、何だか違う気もするが掛け布団を被って再び寝ようと掛け布団に包まっていたら「寒い?」と声を掛けられる。
確かに肌寒い時期ではあるが、布団に包まる必要はない。

さっきからゾクゾクと背筋が凍るような、熱が出る前兆の様な寒さに襲われながら寒さで理性を失っているのか、頷いた。

「あんまり、やりたくなかったけど……」

何を?と聞く前に恋也は俺と恋也の布団の離れている距離は大体30cm、その距離を0cmにして布団に入って、俺の使っている布団に手を入れて来ては背中をゆっくり上下に撫でている。
俺の背中を撫でるのをやりたくなかったとはどういう事だ。

「なぁ……暖まらねぇ」
「そりゃぁ、つっくいたら暖まるけど、離れて背中撫でてるだけじゃ暖まらない」
「……意味ねぇだろ」
「じゃぁ、俺に抱き付いて暖めて欲しいと?」
「アホか」

少しだけ気が楽になったなと、ぼんやり
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