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温泉旅行
温泉旅行(中編/2日目)
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から上がって部屋の前で冷静になりながら扉を開けようと、ドアノブに手を伸ばせば聞いた事のない声が聞こえてきた。
あまり人の話を盗むのは得意な方じゃないが、扉に背を預けて後ろから聞こえてくる会話に耳を傾ける。

『さっきから何度言わせるんだ。30万あげるから売れって』
『何回も言っても売らないに決まってるだろ、それにあの話は昨日の昼間に俺を売ったので終っただろ。いくら客でも身内まで売れる訳がない』
『ふーん……そこまで否定するなら力づくで行動しても構わないけど、君のお兄さんこういう事は初めてだろうけど仕方ない』
『……何が目的なんだよ、お前』
『君のお兄さん――りと君だっけ?彼結構ルックスも良いし賢いから女子に人気だろうな。でも賢いのに君のこんな姿は知らないなんて残念だなぁ。身体中にこんなにキスマーク付けられてるなんて、な』

会話の内容が全く理解できない。
何を売れと言っているのか、こういう事とは何の事なのか、理解に苦しむ。
ただ1つ理解することが出来るのは恋也は扉の向こうに居る奴の事を「客」と言っていたので、その客とやらは商売相手なのだろう。

『1回だけなら問題ないだろ?1回兄を売って自分は30万入るんだぜ?良い話だろ?』
『…………』
『黙るって事は良いって事だな、また次回いつもの場所で』

そう言って客が生み出す足音らしきものが近付いてくる。
俺は少し離れて扉の目の前に立つと同時に扉が開かれて見知らぬ男が現れた。
体つきは中肉中背でどこかのサラリーマンだろうか、スーツ姿で俺達が居た部屋に来ていて上記の会話をしていたのだろう。

初めはバイト先のマネージャーなのかとも思ったが会話を聞いている限り何となく違う気がしてたので、男の逃げ場所が無いように両手で壁に手をつき、通せんぼをする。
いわゆるエアー壁ドンだ。

「お前、俺を売るとか言ってたな。何が目的だ?話さねぇなら無理矢理か警察に脅迫で通報するけど問題ねぇよな。お前が力づくで行動に出るなら俺も暴力の世界で対抗してやるけど?」

中央中学校4ヶ条。
1、六条道りとに近付くな、半殺しにされる。
2、六条道恋也に近付くな、病院送りにされる。
3、数学の宿題は必ずしろ、反省文行きだ。
4、英語の授業は寝るな、寝てしまえば雑用を押し付けられる。
俺と恋也が卒業するまでこの4ヶ条は全く変わらなかったが、今は多分1と2は変わっているだろう。

この4ヶ条のトップ3に居るという事は、学校内全ての生徒に恐怖心やプレッシャーなどを与えている事になる。
俺は喧嘩した奴を大体半殺しにしている。
恋也は病院送り。
それぐらい俺の暴力は凄かったのかもしれない。

睨みつけながら言ってみると、男は急に蒼白な表情になり下記を言う。

「な、なな何でも、ない
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