暁 〜小説投稿サイト〜
IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七話 二パーセント
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だ。
「艦隊の速度を上げろ! 急げ!」



帝国暦 488年  5月 22日    シャンタウ星域 ミュラー艦隊旗艦 リューベック ドレウェンツ



先行する索敵部隊から連絡が入ったのは二十二日に入ってすぐの事だった。“こちらに向かってくる艦艇群を確認。その数、およそ二万隻”。その報告がリューベックに伝えられると艦橋は凍り付く様な沈黙に陥った。身動ぎ一つ許されない、そんな沈黙だ。

ミュラー提督はその報告を聞くと指揮官席で身体を強張らせた。そして眼を閉じると深く息を吐いた。恐れていた事が起きた。多分ケンプ提督は敗北したのだろう。しかし妙だ、敗走してくる艦隊には会わなかった。それにケンプ艦隊からの連絡も無い。どういう事だ?

戦っている最中、こちらの艦隊を秘匿するために通信を封鎖したという事は有り得る。だが敗北したなら味方を捲き込まない為、或いは救援を求める為に通信してもおかしくは無い筈だ。通信妨害をされた? そして全滅? 嫌な想定ばかりが頭をよぎった。

オルラウ参謀長が“閣下”と提督に声をかけた。
「索敵部隊が接触したという事は三時間もすれば我々とも接触するでしょう。如何されますか?」
「……このまま前進してくれ、周囲を警戒しながらだ」
ゆっくりとした、噛み締めるような口調だった。

戦うのだろうか、向こうは二万隻近い兵力を維持している。という事は殆ど一方的にケンプ提督は敗れたのだろう。ヴァレンシュタイン提督の艦隊は間違いなく貴族連合軍最強の艦隊だ、兵力もこちらより多い。このまま進めばその艦隊と戦う事になる。旗艦リューベックの艦橋は重苦しい空気に包まれた。オペレータ達が時折ミュラー提督に視線を向ける。強敵と戦う昂揚感は無い、明らかに怯えている。

三十分程経った時、敵艦隊から通信が入ってきた。スクリーンに黒髪の若い男性が映った。間違いない、ヴァレンシュタイン大将だ。……オフレッサー? ヴァレンシュタイン大将の後ろにオフレッサー上級大将も映っている! 生きていたのか……。艦橋の彼方此方からざわめきが起こった。

『やあ、ナイトハルト、久し振りだ』
「……エーリッヒ」
屈託なくにこやかに話しかけてきた。皆がますます驚いている。
『ちょっと卿に頼みたい事が有るんだ』
「それを聞く前にケンプ提督の事を教えて欲しい。ケンプ提督はどうなった? 艦隊は?」
ヴァレンシュタイン提督がちょっと困ったような表情を見せた。

『ケンプ提督の艦隊は全滅した』
“全滅”という言葉が大きく響いた。皆震え上がっている。オルラウ参謀長が“馬鹿な”と小さく呟くのが聞こえた。
『だがケンプ提督は無事だ、降伏して捕虜になった。彼だけじゃない、百万人以上の部下も一緒に降伏した』
「……」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ