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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六話 釣り上げる
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「はい」
気が付けば唸り声が出ていた。一理ある、しかしわざわざ増援を待つ必要が有るのか? 兵力差は歴然なのだ、攻め寄せて良いではないか。その上で増援を待つ! 俺ならそうする。
「或いは……」
「或いは?」
フーセネガーがじっと俺を見ている。
「相手も増援が来るのに時間がかかるのかもしれません」
「相手もか」
「はい、そしてこちらの増援が何時来るのか、計りかねている」
また唸り声が出た。
迷っているのか、ヴァレンシュタインは。だから思い切った攻勢に出られない。可能性は有るな……。
「閣下! 敵が!」
オペレータの声に慌ててスクリーン、戦術コンピュータのモニターを見た。ヴァレンシュタインが攻勢を強めている! 艦橋の彼方此方から悲鳴のような声が上がっていた。
「参謀長!」
「閣下、先ずは御指示を!」
そうだ、先ずは指示だ。如何する? 艦隊を後退させるか? それとも反撃する? 向こうが迷っているのなら反撃も選択肢の一つだ。こちらが強気に出れば向こうが後退する可能性は有る。待て、あれは……。
「敵、速度を上げつつ陣形を変えています!」
「閣下、敵が陣形を!」
オペレータとフーセネガーが声を上げた。ヴァレンシュタインが陣形を変えつつある。紡錘陣形だ、中央突破を狙う気か! 艦橋の空気が一気に緊迫した。火花が散りそうな気がした。
「こちらも陣形を変える、後退しつつ縦深陣だ、急げ!」
「はっ、後退しつつ縦深陣だ。両翼は現状の後退速度を維持、中央は後退速度を上げろ、急げ!」
俺の出した指示をフーセネガーが命令にしていく。敵は中央突破を狙っている、二万対一万五千、何処まで耐えられるか……。
この時点で攻勢をかけてきたという事は敵の増援は近くに居るという事か? 今までの曖昧な攻撃はこちらを引き止める為? となれば無理せず撤退をすべきではないのか? ミュラーが来るまであと二日半は有る、どうする? 已むを得ずとはいえ総司令部の命令に背く事になる。しかし負けるのよりは良い筈だ。……互いの陣形が少しずつ完成して行く。どうする? 突っ込んでくるか? 撤退、いや踏み止まるか……。じりじりと時間が過ぎ陣形が整って行く、だが答えは出なかった。何時の間にか拳を握り締めていた。じっとりと掌に汗をかいている。気付かれないようにそっと汗をズボンで拭いた。
「フーセネガー参謀長!」
「はっ」
フーセネガーの顔色は良くない。読みが外れた、そう思っているのかもしれない。俺に責められると思っている可能性も有るだろう。
「損害が大きくなる前に撤退すべきだと思うか?」
「それは……」
フーセネガーの表情が歪んだ。足止めは総司令部の命令だ。撤退の責任を自分に押し付けようとしている、そう思っ
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