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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六話 釣り上げる
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督が私を見た。何処か困ったような表情だった。

「ドレウェンツ大尉。士官候補生時代の事だが私は何度もエーリッヒ、いやヴァレンシュタイン提督とシミュレーションを行った。だが殆ど勝てなかった、いつも負けていた」
口惜しそうな口調ではなかった。しかし、ヴァレンシュタイン提督がミュラー提督をシミュレーションで圧倒した? 本当なのか? 本当だとすればヴァレンシュタイン提督の力量は相当なものだ、一部で囁かれるミッターマイヤー提督の敗北は運が悪かったなどで済む話ではない。後二日半、間に合うだろうか……。自信が無くなってきた。

「稀に勝つ事が有ってもそれは私が勝ったというよりヴァレンシュタイン提督が何かを試してそれが上手く行かなかった、それで私が勝った、そういう勝利だった。本当の意味での勝利ではなかったと私は思っている……」
「……」

「もっとも彼はシミュレーションの戦績にあまり拘らなかった。彼の口癖が戦争の基本は戦略と補給だった。勝てるだけの準備をしてから戦う、そして戦えば必ず勝つ」
「……」
ミュラー提督が大きく息を吐いた。
「我々はそういう相手を敵にしている。間に合えば良いんだが……」
提督の沈痛な表情は変わらない。間に合うだろうか……。



帝国暦 488年  5月 20日  シャンタウ星域  ケンプ艦隊旗艦 ヨーツンハイム カール・グスタフ・ケンプ



五時間の駆け引きの後、ヴァレンシュタイン艦隊は攻勢を強めてきた。艦隊の速度を上げ距離を詰めて攻撃をかけてきている。しかし未だ本気とは思えない、こちらの様子を見ている、そんな感じの攻撃だ。こちらは押されながらも相手を窺っている、そんなところだろう。それがもう四時間近くも続いている。どうもおかしい。
「参謀長、どう見る」
「はっ、なんとも判断しかねますが……」
参謀長のフーセネガーが口籠った。やれやれだな。

「兵力の少ない我々が撤退しなかった、相手を引き止めている。となれば常識的に考えて我々には増援が有る、時間稼ぎをしている、相手はそのように見ていると思います」
「うむ、そうだな」
ヴァレンシュタインがそれを分からないとも思えない。

「となりますと敵の攻撃はいささか不可解です。兵力が多いのであればそれを活かして各個撃破を図るのが用兵の常道、或いはこちらの増援が来る前に撤退するのも有ると思います」
「俺もそう思う。だが現実にはヴァレンシュタインは俺達の時間稼ぎに付き合っている。今も本気とは思えない攻撃だ、不思議な事だ」
ヴァレンシュタインが無能なら有り得る。しかし無能ではない、無能でない以上何らかの狙いが有る筈だが……。

「となると敵にも増援が有るのかもしれません」
「合流してから一気に我々を押し潰すか」
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