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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六話 釣り上げる
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手く行きそうにない。エーリッヒと戦う前に罵り合いが始まりそうだ。
「おい、リューネブルク」
「何ですかな」
「貴族連合軍は敗けると俺は思っていたんだがな、間違いだったか?」
オフレッサーが顎髭を頻りに撫でている。リューネブルク中将が俺を見て笑い出した。駄目だ、俺もまた笑い出しそう。
「ヴァレンシュタイン提督の見積もりでは勝算は二パーセントだそうです」
「はあ? 二パーセント? 二パーセントも勝ち目が有るのか? ヴァレンシュタイン、卿、正気か?」
オフレッサーの声が一オクターブ上がった。二パーセントも勝ち目が有るのかって、そっちかよ。エーリッヒは不愉快そうに顔を顰めている。駄目だ、また吹き出した。オフレッサーが来てから笑ってばかりいるな。何故だろう?
「アントン、そろそろ始める」
「エーリッヒ、少し早いが」
「急に戦いたくなったんだ。卿らの笑い声を聞いていたらね、ムカついてきた」
止めろ、エーリッヒ、腹の皮が捩れる。頼むからその仏頂面は止めてくれ。
皆が笑う中、エーリッヒが艦隊に速度を上げるように命じた……。
帝国暦 488年 5月 20日 ミュラー艦隊旗艦 リューベック ドレウェンツ
「あと三日、いや二日半か」
指揮官席に座ったミュラー提督が大きく息を吐いた。表情は沈痛としか言いようのない表情だ。僚友であるケンプ提督と親友であるヴァレンシュタイン提督が戦う。提督はかなり心を痛めている。やはりアルテナ星域の会戦、あの敗北が響いている。
アルテナ星域でミッターマイヤー提督がヴァレンシュタイン提督に敗れた事は政府軍にとって酷い衝撃だった。ヴァレンシュタイン提督が有能である事は分かっている。しかしあそこまで一方的にミッターマイヤー提督が敗れるとは……。誰もが信じられず何かの間違いだと思った。
その衝撃の所為だろう、心無い連中がミュラー提督を非難するかのような事を言った。だが提督はそれに対して何も反論しなかった。ただ無言で沈痛な表情をしていただけだ。そして今も沈鬱な表情をしている。総司令部から援軍を命じられた時からずっとだ。
「閣下、少しお休みになっては如何ですか? いささかお疲れのように見えます」
「……」
私が声をかけても返事は無かった。聞こえているのだろうか?
「閣下?」
「ああ、済まない、気を遣わせてしまったな。だが私は大丈夫だ」
提督は私を見て微かに笑みを浮かべた。痛々しい笑みだ、とても見てはいられない。
「大丈夫です、ケンプ提督は我々の艦隊が三日後に戦場に着く事を知っています。それまで無茶はなされないでしょう」
気休めではない、その程度の事は出来る筈だ。
「……だと良いが……」
「閣下?」
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