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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五話 死に場所
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止まらん。エーリッヒも笑っている。全く、こいつは何でこんなに明るく笑えるんだ? 狡いじゃないか。
「なるほど。となるとそれに付き合おうとしている俺達は底無しの大馬鹿という事か」
「そういう事だ。しかしこの世界もそれほど捨てたもんじゃない。一つだけ良い事が有る」
「と言うと?」
エーリッヒが悪戯っぽく笑みを浮かべた。
「出世争いとは無縁の世界だから居心地が良いんだ。何と言っても先が無いからな」
確かにその通りだ。エーリッヒと二人、一頻り笑った。哀しくて切なくて馬鹿みたいに可笑しかった。
「アントン、飲まないか?」
「昼間からか?」
「ここは要塞の中だ。御日様なんて何処にもない。誰も気にしないよ」
「一杯だけだぞ」
一杯じゃ終わらないだろうな、嬉しそうに頷くエーリッヒを見ながら思った。
一昨日、ロイエンタール提督がシャンタウ星域で貴族連合軍を打ち破った。味方は三割程の兵力を失って潰走した。そこまでは予想通りだから驚かない。驚いた事は会戦の場所がシャンタウ星域だった事だ。ガイエスブルクからはかなり距離が有る。用心している、増援が無い事を確認してから攻撃したのだろう。やはり貴族を餌として使えるのは次が限界のようだ。
一昨日、昨日と貴族連合軍の艦隊がガイエスブルク要塞を出撃した。兵力はそれぞれ一万五千隻、ラートブルフ男爵、ホージンガー男爵を中心とした艦隊だ。一昨日の敗報を聞いて雪辱との事だがこの二つの艦隊が餌候補だ。さてどちらに、誰が喰い付く。ケンプ、ビッテンフェルト、ナイトハルト・ミュラー。或いはそれ以外か……。
帝国暦 488年 5月 20日 シャンタウ星域 ケンプ艦隊旗艦 ヨーツンハイム カール・グスタフ・ケンプ
「連中、馬鹿なのか?」
「閣下、そのお言葉は」
「すまん、参謀長。しかしな……」
“これは酷いだろう”、そう言おうとして言葉を飲み込んだ。フーセネガーも大凡の事は察したのだろう、困ったような表情をしている。戦況は有利だ、にも拘らず指揮官席の司令官と傍に立つ参謀長が顔を見合わせて困惑している、何なのだ、これは。
シャンタウ星域で貴族連合軍と接触した。敵は一個艦隊、約一万五千隻、こちらとほぼ同数だろう。先日ロイエンタールがやはりここで貴族連合軍と戦い勝っている。どうやら貴族連合軍はこのシャンタウ星域で雪辱を期したいと思っているようだ。しかし希望と現実は違う。開戦直後、僅かな時間で貴族連合軍は圧倒的に不利な状況に陥っている。練度も低ければ指揮も拙いのだ、これでは自ら負けるために出撃してきたようなものだ。
「もうすぐ敵は後退するものと思われます」
「うむ」
後退か、潰走に近いかもしれんな。こちらは敵の両翼を交互に叩いてから中央に
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