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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三話 効率
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撃ち減らされた。部下を無意味に大勢死なせてしまった。あの惨めさ、苦しさは……、言葉では表せん」
余程に苦しかったのだろう、普段の提督からは想像もつかない程暗い表情で首を振っている。
「ですがミッターマイヤー提督は戦闘直後に人事不省に……」
「だから責任が無いとでも? そんな事でミッターマイヤー提督が自分を欺けるとでも思うのか? 百万人以上の将兵が死んだのだ。ドロイゼン、バイエルライン達分艦隊司令官も皆死んだのだぞ」
「……申し訳ありません、思慮の無い事を言いました」
確かにそうだ。ミッターマイヤー提督なら自分を許せないだろう。自分は何を言っているのか。
「俺は動けたからな。苦しくてどうにもならん時には無理矢理身体を苛めて疲れ切って眠る事が出来たが絶対安静では只々苦しみ続けるしかあるまい。辛い事だ……」
我々の前ではいつも変わらぬ豪放磊落な提督だった。提督がそんな苦労をしていたとは……、知らなかった……。
「雪辱の機会が有れば良いが」
雪辱の機会? ヴァレンシュタインとの再戦という事か。
「その希望が有るだけでも違うのだがな」
そうか、提督はヤン・ウェンリーと……。提督には希望が有る、だがミッターマイヤー提督は……。溜息が出そうになった。
帝国暦 488年 4月 20日 アルテナ星域 ヴァレンシュタイン艦隊旗艦スクルド アントン・フェルナー
艦橋に一歩足を入れるとそこは他の場所とは別世界かと思う程静かだった。強敵を相手に大勝利を収めた興奮は何処にもない。理由はエーリッヒだ。指揮官席に座るエーリッヒは何かを考え思い悩んでいる。時折溜息も吐いているようだ。その姿を見て部下達は騒ぐのを控えている。ビスク・ドールが悩んでいる、部下達にとっては天変地異の前触れだろう。部下を不安にさせるとは、指揮官失格だな。
「困ったものだな、フェルナー参謀長」
「全くですよ、リューネブルク中将。一体何を悩んでいるのか」
お互い苦笑しか出ない。二人でエーリッヒに近付くと後五メートル程の距離で柔らかく押し返してくるものが有った。遮音力場? リューネブルク中将も気付いたようだ、訝しげな表情をしている。エーリッヒがこれを使う事は殆ど無い。構わず中に入ったが気付く様子も無い、心ここに有らずだな。
「いけませんな、提督。大勝利を収め皆が喜んでいるのに提督だけが思い悩んでいる。兵達は皆提督を心配していますよ」
リューネブルク中将に言葉にエーリッヒがチラッと周囲を見た。心配そうに見ていた部下達が慌てて視線を逸らす。エーリッヒが軽く溜息を吐いた。
「何を悩んでいるんだ? 完勝出来なかった事か?」
エーリッヒが首を横に振った。そうだろうな、そんな事で思い悩むような奴じゃない。
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