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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第一話 動乱の始まり
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した、今でもです」
俺がケスラー提督の問いに答えると皆がちょっと困ったような表情をした。親友という言葉に引っかかったのだろう。だが取り消す気は無い、本当の事だ。

「少し聞いても良いかな」
遠慮がちな声が聞こえた。
「構いませんよ、ワーレン提督」
「平民の彼がブラウンシュバイク公爵家に仕えたのはちょっと不思議な気がするんだが何か伝手でも有ったのかな」
何人かが頷いた。そうだな、普通は貴族の所有地の出身か、それでなければ何らかの伝手が無ければ貴族に仕える事は無い。

「我々共通の親友であるアントン・フェルナー少将がブラウンシュバイク公爵家に仕えていました。彼の親戚が公爵家と関わりが有ったのです。そして或る事情からエーリッヒはブラウンシュバイク公爵家に仕える事になった……」
「或る事情?」
皆が不思議そうな表情をした。

「ええ、詳しくは言えませんが軍上層部に睨まれて命が危険になったからです。私がそれをアントンに話してアントンがブラウンシュバイク公に相談した。そして公がエーリッヒを庇護したのですよ。エーリッヒは貴族が嫌いでしたから不本意だったでしょうが生きるためには已むを得なかった……」
皆が考え込んでいる。おそらくはエーリッヒの両親が貴族に殺された事を思っているのだろう。そしてそれにも拘らずブラウンシュバイク公爵家に仕えるエーリッヒの心情を。誰かのグラスがカランと音を立てた。

「ブラウンシュバイク公は儲けたな」
ロイエンタール提督がポツリと言うとテーブルに苦笑が溢れた。
「そうだな、あそこは領内の統治も極めて開明的で領民達のブラウンシュバイク公に対する信望も厚いと聞いている。他の貴族領とはえらい違いだ。あれはヴァレンシュタインがやった事だろう?」

「ああ、武勲を一つ上げて昇進する度に改革案を提示したと聞いている。ブラウンシュバイク公はそれを受け入れた」
ケンプ提督の問いにケスラー提督が答えた。その通りだ。本当は後方での勤務を望んでいたがそのためにエーリッヒは前線に出続けた。そしてどの戦場でも抜群の功を挙げた。だからブラウンシュバイク公もエーリッヒを信頼し改革案を受け入れた。そして改革が進めば進む程公のエーリッヒに対する信頼は厚くなっていった。

「軍備も相当なものだ。艦隊戦力は毎年増強して六万隻を超える。かなり厳しい訓練を積んでいる」
「クロプシュトック侯の事件の時には出なかったのか?」
「出なかった。一説には貴族達の実力を知る良い機会だと敢えて出さなかったと言われている。貴族連合軍の余りの惨状に当てにならんとブラウンシュバイク公は呆れたらしい」

メックリンガー提督とルッツ提督の会話に皆が失笑した。が俺は笑う事は出来ない、鎮圧軍を出すなとブラウンシュバイク公に進言した
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