第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日:『星辰の日』U
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としたのだが……流石に、新幹線には追い付けない。八十メートル先に空間移動した黒子の後ろ姿を見送って。
苦笑する飾利と涙子に向けて、肩を竦めて戯けてみせた。
「と言う訳で、送ってくよ」
幸い、彼女らの寮の場所は知っている。帰り道に迷うような事もない。ジュースを何とか飲み干し、何処かに屑籠はないかと見回す。
「あ、わたしが捨ててきますよ」
「いやいや、そんな悪いし」
「奢って貰ったお礼です」
おっとりしているように見えて、飾利が一度こうと決めたら梃子でも動かない事は、もう分かっている。
仕方なく空き缶を預ければ、自分の分と涙子の分も含めた三人分を持って、少し離れた場所にある……と言うか『居る』清掃ロボットの方へと、とてとてと駆けていく。
転ばないかと胸を高鳴らせた……ではなく、手に汗握ったのは内緒。
「────もし、そこのお二方。お訊ねしたい事があるのですが」
「え、あ、はい?」
「はい、どうかしましたか?」
そこに、背中から野太い声が掛かる。不思議と、どこかで聞いた覚えがある気がしたが……今は気にしない事にして。
振り向いた先、そこに────見覚えの無い、三十絡みの男性の姿。甚平に雪駄、扇子と言うこれから夏祭りにでも行きそうな出で立ちの長身に、痩躯にすら見える程に引き締まった身体。糸のように細い眼差しに笑みの張り付いた、スキンヘッドの好好爺然とした男性が。
「いや、実は道に迷ってしまいましてな。ここにはどう行けばよいのですかな」
見せられた紙、そこには住所とアクセス方法。しかし、そこは。
「対馬さん、ココ、柵川中の寮ですよね?」
「多分……そうだと。お子さんにでも会いに?」
「似たようなもの、ですかな? ハッハッハ……」
いきなりの不躾にも、笑って済ませる鷹揚な人物のようだ。そのせいか、警戒心は失せている。
そのスキンヘッドが、夕方の日差しを浴びてキラリと光って。
「だったら、私達が送りますよ。丁度、そこに住んでますから」
「おや、それは有り難い。篤く御礼申し上げます」
「否々、元々用事があっただけですから。頭なんて下げないでくださいよ」
深く頭を下げられ、此方が恐縮してしまう。涙子も嚆矢も、揃って一歩前に。
「何の、恩を受ければ礼を尽くすのは当たり前の事。礼を失しては沽券に関わりますからなぁ……」
そんな二人に向け、頭を下げたまま。男性もまた、一歩足を踏み出して────。
「────この、鷹尾 蔵人の」
「────」
にたりと、嘲笑う声。背筋に感じた悪寒と、目に見えるかのように昂る瘴気。しかし、既に遅い。もう、間|合
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