第6話 Accelerating Turn 1
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んがにこやかな笑顔で袋を2つ、いや、3つ渡した。
その笑顔の裏に、よくこんなに食えるなと言う感情が秘められている。たぶん。
俺は、そんな先輩を見て、ガタリと席から立ち上がる。ヒイラギがやめろとか言っていてが、無視する。最近無視するのが多くなったな……
「あの、先輩。」
ヒシッと、彼女の袋を持っていない方の手を掴む。
大勢の生徒が息を呑み、こちらを凝視する。
「先日の謝罪と、お礼を………」
そう言ったはいいが、彼女はいつも通りに手を引き、スタスタと去っていく。
「ちょっ、またですか??」
俺も、いつも通りに彼女を追う。
その時後ろで、奇跡だ、とか言われていたが、気にしない気にしない。
****************
屋上の陰で、サテライザーは深呼吸をしながら座り込んだ。まだ心臓の音は鳴り止まずに、早鐘のように鳴り響いている。
どうしてだろう。今まで、誰かに触れられることすら気持ち悪かったのに……
「探しましたよ……」
ふと顔を上げると、彼がいた。
いきなり掴みかかってきて、訳のわからない事を言ってきた彼。
関係ないのに、自分を助けようとしてくれた彼。
何度振り払っても、飽きることなく、自分に近づいてきた彼。
不思議な少年。アオイ・カズトが、そこにいた。
「あなた、なんで……」
「いや、何でって…これ。」
カズトは、サテライザーにその手に持っていた紙袋を渡した。バーガークイーンで買ったものの一つだ。
先ほど彼に掴まれた時に落とした様だ。
「あ、ありがとう……」
「いえいえ、お礼を言うのはこっちの方ですよ。」
カズトは頭を下げて、誠実に言う。
「すいませんでした。そして、ありがとうございました。」
「え、え?」
サテライザーには意味が分からなかった。自分には謝られる理由も、お礼を言われる理由も分からなかったのだ。
「カーニバルを邪魔してしまって。そして、ガネッサ先輩から助けてくれて。」
そんなことで……カーニバルなど気にも留めていなかった。と言えば嘘になるが、別に誰かに当たり散らすなどはしない。
だが、本当にそうだろうか?
もしかしたら、彼だから、そう思わないだけなのでは無いのだろうか?
そう思ったら、急に恥ずかしくなり、顔を逸らした。
「カーニバルのことは……もう気にしてない……あの時、助けたのは……貴方が、庇ってくれたから……」
途切れ途切れでも、声を絞り出し、彼に伝える。
これだけでも、今の彼女には精一杯だった。
それを聞いたカズトは、安心した様に笑い、サテライザーに目線を合わせる様にひざ立ちになった。
「先輩……いきなりで、なんの脈絡もないお願いなんですけれど。」
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