第一章
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ている。
「捨ててきて」
「雪の中をかよ」
「雪が好きなんでしょ?それに誰かが捨てに行かないといけないじゃない」
彼女はこう男の子達に対して言う。随分と厳しい口調だ。声は高く澄んだものであるがそれが余計に厳しさを際立たせもしていた。
「だからよ。捨てて来て」
「わかったよ。じゃあ」
「ジャンケンでな」
「三日月君」
だが彼女はここで殺気一番騒いでいたその黒髪を短く刈った少年に声をかけてきた。
「御願いね」
「おっ、数馬御指名」
「やっぱりそうなったな」
「ちぇっ、俺かよ」
その少年三日月数馬は周りの煽りもあって口を尖らせて言った。
「またかよ。おい葉山」
「何?」
葉山と呼ばれたその少女は平然として数馬に言葉を返す。視線も傲然としたものだった。
「俺ばっかり言ってないか?」
「気のせいよ」
「そうか?」
「大体三日月君いつもお掃除とか真面目にしていないじゃない」
そのうえでこう数馬に言ってきた。
「だからよ。いつも好き勝手ばっかりやって」
「ちぇっ、反論できないところが悔しいな」
自覚があるのだった。だから反論できなかったのだ。
「まあいいさ。捨てに行けばいいんだろ」
「ええ、御願い」
「わかったよ。じゃあ」
そのゴミ箱を受け取る。しかしその時に二人の手と手が触れて。何故か彼女の目が動いて顔が微かに赤くなったのだった。誰も気付いていなかったが。
「行って来るな」
「走って滑らないようにね」
駆けていく数馬に対してまた言った。
「危ないから」
「わかってるよ。そんなこと」
「わかっていたら廊下は駆けないの」
また言うのだった。
「わかってないじゃない」
「ちぇっ、五月蝿いな」
そうは言いながらも駆けるのを止める数馬だった。速足だが廊下を進んでそのまま姿を消す。少女はそんな彼を見て顰めさせた顔で溜息をつくのだった。
「全く。世話が焼けるんだから」
「そうよね、全く」
「あれでやんちゃじゃなかったらね」
周りの女の子達も口々に姿を消した数馬の後姿の残像を見ながら言い合う。
「結構頭もいいしスポーツもできるし」
「結構気がつくしね」
「そうそう、裏表がないのがいいのよ」
実は人間としてはそんなに評判の悪くない数馬だった。
「明るいしね。顔だって悪くないし」
「それでどうしてねえ」
「まあそれがあいつだよな」
「だよな」
男の子達も女の子達のその話に入る。ただし今度はちゃんと掃除をしながらだ。
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