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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第二十九話 暴かれる神話
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「今から2000年前だ。精霊は死に、自然が絶え、人も滅びへ向かい始めた。そこで精霊の主マクスウェルは断界殻という破格の閉鎖術式を施し、このリーゼ・マクシアを創り上げた」
「それでは断界殻の外には、まだ世界が広がっていると言うのか」

 ガイアスが苛烈に見据えるのはミラ。対するミラはどこ吹く風という様子だ。

「ああ。その外の世界を、エレンピオスという。リーゼ・マクシアとエレンピオスは元々一連なりの世界だった。この世界は、かつてマクスウェルが選別した精霊、精霊と交信できる人間、そして生物を寄せ集めて成立したものだ。マクスウェルは、それこそが人と精霊を救う手立てだと信じていた」
「救う?」
「2000年前の時代は命の衰退期でな。世界からマナが枯れ、精霊が滅びつつあった。その現状を改善しようとマクスウェル、そして我々の一族の始祖が力を合わせて駆け回ったが、徒労に終わったらしい」

 徒労どころか、2000年分の負債を今まさに払わされている真っ最中だ。
 この世界の兄さんたち――どうしているだろうか。

「マクスウェルは先に述べた方法でリーゼ・マクシアを創り、移住することにした。しかし始祖はこれを善しとせず、エレンピオスに残った。おそらく始祖は、誰かを選び、その者たちだけを救うことを許せなかったのだろう。マクスウェルは始祖の返答を、始祖が利己的な人間側に付いたからだと受け止め、始祖とエレンピオスを見捨ててリーゼ・マクシアを閉ざした」
「――どれだけ高尚な道を説こうが人は太古の昔から変わらない」

 ミラが沈黙を破って長椅子を立ち、初めて私たちを目に映した。

「世界を左右しうる力を前にして、人は己を保つことはできない。賢者クルスニクもその一人に過ぎなかったというだけだ」

 まるで見てきたような口ぶりだが、その言い方はおかしいんだよ、ミラ。君が本物のマクスウェルならば、クルスニクの末裔であるイバルや私に対して反応しないわけがない。

「こうして世界は分断され、リーゼ・マクシアとエレンピオス、それぞれ全く異なる2000年を歩んできた。それが崩れたのが今から20年前のファイザバード会戦であり、ジルニトラ号遭難事件だ」

 すまない、アルヴィン。今から君には酷な話をする。

「エレンピオス側にはリーゼ・マクシアや精霊の存在は、おとぎ話同然ではあるが伝わっていた。検証が進んで、ただの伝承ではないと信じた連中が事を起こした。エレンピオス軍は断界殻の一部破壊に成功。しかしこれにマクスウェルが反撃した影響で、ファイザバード荒野を大津波が襲った」

 場の人間の視線が様々な意図でミラに向かう。

 ミラは欠片も動じない。これをやったのはミラじゃない。ミラだとしても、リーゼ・マクシアを守るため必要な犠牲と言うんだろう。

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