第七十二話
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たちが、平和なアルンの上空を支配していき、その中の幾つかがカフェの近くの広場に降下を開始する。
「リーファちゃーん!」
その飛竜たちのうちの一匹から、見知ったシルフが――レコンが姿を見せる。よく見ると、その胸ポケットにはユイの姿が見える。そして二人のやっていたことは、このシルフとケットシーの軍勢を、このアルンまで誘導することだと悟る。
偵察に秀でたレコンとナビゲーション・ピクシーのユイの二人ならば、手早くアルンに誘導することも可能なのだろう。事実、シルフとケットシーの軍勢に目立った損害はなく、あとは世界樹の攻略に乗り出すのみ、という状態だ。
「自分に出来ることを、か……」
リズの先程の言葉を思い返しながら、俺は知らず知らずのうちに日本刀《銀ノ月》を握り締めていた。世界樹は変わらずアルンにそびえ立っている……
……そして、その世界樹の頂上では。檻に閉じ込められたアスナが外を眺めていた。見えるものと言えば雲ばかりだが、他に何があるわけでもない。
しかし、今までは祈ることしか出来なかった彼女だったが、今は確かな希望があった。娘であるユイの呼びかけと、一緒にいるはずのキリトに託したカードキー。
すぐにでもキリトが助けに来てくれる――そう、アスナが願っていた矢先に、部屋の扉が開く。もちろん、キリトが早くも来たわけではなく、扉が開いた瞬間に不愉快な声がアスナの耳に届いた。
「やあ、ティターニア。随分とおてんばしてくれたらしいじゃないか」
「……今は出先の機関じゃなかったの? 須郷さん」
この事件の黒幕である須郷伸之のアバター、オベイロンが部屋に仰々しく入ってくる。脱出未遂事件で連絡が取られているため、近いうちに顔を見せるだろう、ということはアスナも予想していたが、今は出先にいて帰ってくるのに時間がかかると思っていたが。
「ああ。キミのせいで、帰る前にこんなところに寄るはめになったよ。……ところで、どうやってそこから出たのか、参考までに教えてくれるかな?」
「嫌よ」
鏡のトリックは、まだ須郷たちにバレてはいない。恐らく、研究室にいる連中が気づくことはないだろうが、一度脱走を許しておいて監視をしていない訳もない。もう鏡を使っての脱走は無理で、隠す意味もないことはアスナも分かってはいた。
「そうか、なら別に構わないよ。……すぐに自分から言う事になるんだからね」
「……どういうこと?」
聞き出す、ではなく自分から言う事になる、という言い方が引っかかり、アスナは須郷に問い返す。須郷もそう聞かれることに期待されていたのか、下卑た表情を浮かべながら演説でもするかのように話しだす。
「今回の出先で、ようやく実用化の目処がたったんだよ。ナーヴギアを使った人間の
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