第七十二話
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るように。
「……言いたいことは分かったわ」
……しかし、いくら話そうが、客観的に見ればそれは、ただのゲームの話である。ましてやフルダイブやアミュスフィア等の機器に、家族揃って疎いここならば尚更のこと。それでも、ただのゲームだとしても。
「俺は確かに、二年間あっちで暮らしてたんだ……」
ゲームの中だったとしても、アインクラッドで過ごした二年間は決してゲーム何かじゃない。確かにあの二年間を暮らして、生き延びて、日々を過ごしていた。それが例え、思い出したくないことも数え切れない程あるデスゲームだったとしても……あの二年間を、良くも悪くもなかったことには出来ない。
「そこで助けられた恩を返したいんだ。今度は俺が助ける番だ、って!」
家族に語った俺の言い分は、端から見ればゲーム中毒か、現実逃避をしきってしまった人間の言葉だった。それでも、そんなことをずっと迷っていないで、キリトの助けになることを優先する。…我ながら、そう考えるまで何て遅いことか。
「第三者から見たらゲームの話なんだろうけど……」
「もういいわ、分かった」
話しているうちに、弁に熱がこもってしまっていた俺の言葉だったが、母の冷静な一言に口をつぐむことになった。俺に対する制止の言葉に続いて、母もまた言葉を紡いでいく。
「言いたいことは分かったわ。頑張ってね」
「……えっ?」
邪魔して悪かったわね――と、さらに続けて母の言葉は終わる。あっけに取られて、間抜けな疑問の声を口から出してしまった俺に対し、母は溜め息混じりに回答する。
「目的があるんなら良いじゃない。何も悪いことしてないんでしょ?」
「あ、ああ……うん」
もっと糾弾を受けてしまうことを覚悟していた身にとって、母のその言葉には肩すかしをくらってしまう。そんな俺の様子を見てか、母はわざとらしく表情を歪ませる。
「なに? もしかして、絶対にあの機械に触るな! って言われることを期待してた? 良いとこのお坊ちゃんじゃあるまいし、そんなわけないでしょ」
……やはり母には一生適いそうにもない。サバサバしたその物言いに、つい身体の力が抜けてしまうものの、何とか耐え抜いて父の方を見る。先程から一言も口を発していない父だったが、いつも無愛想な父も、心なしか顔に笑みを浮かべて――
「ほら、あんたも黙ってないで何か言ってあげて」
――母に小さく叩かれていつもの無愛想な顔に戻る。やはり、我が家で最強なのは基本的に母らしい、ということを今更ながら確認する。
「……早く行ってあげなさい」
結局、父が言ったことはその一言だけだった。しかし、その発言はかなり的確でもあり――随分と時間が経ってしまっていた――慌てて道場の床から立ち上がる。キリ
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