第七十二話
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れている――それを見た両親の気持ちは想像に難くない。だから秘密にしていた……などと言うのは、ただの俺の都合に過ぎない。
「親不孝者だな……」
明るい母に寡黙な父。デスゲームから帰ってきて剣道も出来なくなって、関係もこじれて、会話も減って……こんな状況になったのも、俺が逃げていたのが原因だ。細かいことをグチグチと考えて行動せず、結局逃げの一手を取ってしまうことが、俺の悪癖だと父は言っていた。同時に、たまには迷わずに即決してみろ、というアドバイスも合わせて。
「……もう逃げるのはやめだ」
まずは現実から逃げないように。頬をパチンと叩いて気合いを入れてから、両親が待っている道場へと、手近にあったコートを羽織って離れの自室から出て行った。
外はコートを着ていても肌寒く、空は雪が降りそうな天気だった。……その空を眺めていると今更ながら、あのデスゲームからもうそれだけ経ったのか、と痛感した。
家の母屋とともに併設された道場。そう聞くと豪邸のようで聞こえは良いが、正直に言うと道場にばかり面積を取られているため、広々とした豪邸には程遠い。聞いたところによると、小さい時にはキリトも通っていたらしく、直葉は俺たちがアインクラッドに囚われていた時も、足繁く通ってくれていたらしい。当然ながら、俺も小さな頃からこの場でお世話になっており、思い出も数え切れない程にある。アインクラッドに囚われていなければ、今もここで、竹刀を振っていただろうと確信できるほどに。
……そんな、古来より続く木造の神聖な場所だ。適当に羽織ってきた黒いコートを脱いで手に持ち、もう一度気合いを込めて襖を開けると、そこにはもちろんのこと両親が鎮座して待っている。礼をしながら敷居を跨ぎ、座る両親の前に自分も座る。
随分と仰々しいことをやっていると自分でも思うが、こういうことは古来からの礼儀を重んじる父の影響だ。神聖なる道場で俺のことを糾弾する――というと、やはり大げさだが、やっていることはリビングに呼び出して家族会議をする、というようなことと何ら変わりはない。
「翔希、何の話かは分かるわよね?」
父はやはり黙ってこちらを見ているのみで、問いかけてくる母に無言でコクリと頷く。ナーヴギアの亜種でフルダイブしていたことについては、何の言い訳が出来るはずもない。
「あの機械じゃなかったみたいだけど、何でまた使ってるの?」
「必要だった。友達に助けられた、恩返しがしたいんだ」
キリトに助けてもらった恩返しを。俺があの世界に行ったのは、まずはそういう目的だった。怪訝な表情を浮かべる母に対し、俺は一から今起きていることを説明していく。キリトのこと、アスナのこと、ALOのこと。俺がどうして、再びフルダイブの世界に行ったのか、必死に伝わ
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