第七十二話
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たしも武器を通して、自分なりに戦っていたと思っている。第四層の時から何人、何百人の武器を見て直して作って……祈ってきた。この武器を使う人間が、どうか無事に帰ってこれますように、と祈って……プレイヤーたちを死地に送り込んできた。
そして一番の傑作を携えた彼は、《笑う棺桶》の討伐戦に各階層のボス戦、最後の層となった75層のボス戦と、様々な死地を巡って、そして帰ってきてくれた。その都度、祈りを込めて武器をメンテして、それでまた彼は攻略に向かって行って……茅場晶彦との戦いでも、彼は――ショウキは帰って来てくれた。
「……もう一生分の心配、しちゃったのかもね……」
もう一度だけ小さく呟くと、こんなこと考えているなんてらしくない、と首を振ってそんな思考を頭から追い出す。レコンのせいで時間を無駄にした……と責任転嫁しつつ、可能な限り素早くスピードを出して目的地に飛ぶ。補助コントローラーだからショウキ達ほどスピードは出ないけれど、あたしが目指している場所はそう遠くない。
「お、っとと……」
高くそびえる世界樹をもう一度見据えながら、まだ少し覚束ないホバリングをしながら目的地を着地する。アスナを助けるために、あたしが出来ることは正直少ない……そんな自分が情けないけれど、それでもあたしにしか出来ないことがある。
そのためにあたしは、目的地である――あたしたちが昨日泊まった宿泊所に入っていった。
人生で二回目の強制ログアウトを経験した俺が最初に見たのは、見知った自分の部屋の天井だった。今度の強制ログアウトでは、現実に帰って来れたことに少なからず安堵しながら、アミュスフィアを頭から取って起き上がった。
アミュスフィアは『今度こそ安全』、などと冗談のようなキャッチコピーを掲げているだけあって、何か異変があった場合にはすぐさま強制ログアウトが起きる。その分ナーヴギアより脳に及ぼす影響が低く設定され、アバターに関する様々なことが劣っていたりするが……それはともかく。そして、強制ログアウトの条件は体調の異変だけではなく、もう一つ決定的なものがある。
「……父さん、母さん」
――外部からコンセントを抜かれることだ。
俺が寝ていた布団の横には、アミュスフィアのコンセントを持った母と、百円ショップで買っていた鍵を片手に持った父が佇んでいた。強制ログアウトの真相はこういうことだろう、と心のどこかで俺も考えていたらしく、驚くほど冷静に両親を眺めていた。
「ここじゃ話すことも話せないわよね。……頭冷やして、道場に来なさい」
母は矢継ぎ早にそう言うと、黙ったままの父とともに、止める間もなく離れの部屋から出て行く。二年間デスゲームに囚われていた俺が、再びナーヴギアと同種のアミュスフィアを使い、そのまま倒
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