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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第15話 転換点
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 表情を曇らせた嵩宰恭子に告げる。
 すると彼女は苦笑いと共に感想をこぼしてお茶をすする。

「―――不器用ね。」
「よく言われます、が偽りなき本音でもあります―――常在戦場の心構えあれば責任の転嫁など気持ちが悪くて仕方がない。
 誰を恨む気持ちも、憤りすらありません。……私が強ければ良かっただけの話です。」
「それでもあの時乗っていたのが武御雷であったのなら、また違った結末だったのではないの?」

「戦場で、敵がそんなのを理由に手加減してくれますか?負けの理由を道具にするのは二流のすることです。」
「厳しいのね―――あなたはある意味、生れながらの武家よりも武士らしい。」
「それは当然でしょう、武家に生まれ者たちの大部分は武士ではなく侍。その在り様は似て非なるものです。」

「成程ね……貴方という人が少し分かった気がしたわ。」

 嵩宰恭子はお茶を啜ると目を細める。
 しかし、彼女に自分の価値観を説いたところで自分の何が変わるわけでもない。
 頓着するだけ無駄だ。


「貴方はある意味、篁の小父様や唯依とは正反対の人間……あの子たちは侍、自らの役割に徹する事を信念とする存在。
 対して貴方は武士、自らの定めた道のためになら何を犠牲にしようと構わない求道者という存在―――成程ね、多くの斯衛の衛士が惹かれる筈よ。」

 残り少なくなった茶の揺れる水面を見つめながら彼女はポツリポツリと語りだす。


「今の多くの斯衛兵たちは元来、戦場に立つことはないとされていた者たちよ―――当然、名家の当主など体面的問題から元々衛士としての志願を余儀なくされていた者も多い、唯依のようにね。
 でも、その精神面は何方にしても徴兵された兵士に鍍金(めっき)を被せただけに近い。そんな者たちを鼓舞するために将軍所縁の私たち五摂家も戦場に立つけど、その本質は彼女たちと大きな違いはないの。」

「ええ、それは重々に承知しております―――だからこそ、俺たち黒はそんな生まれながらに徴兵が決まりながらも、誇り高くあろうとする気高き者たちを守りたいと斯衛に志願したのです。」

 俺が、斯衛に入ったのは剣を極めるのに好都合な環境と、そこに納得できる戦場と戦う理由だったからだ。
 人間の心は、行動の理由がどれか一つだと断定できる場合は限りなく少ない。

「そういう事が言える貴方の志もまた、(たっと)ぶべき物。生まれながら、というある意味において受け身の私たちには無い強さ。
 貴方は本来、武家が持っていたけど世代を重ねた末に失ってしまった武士の誇りを持つ。きっと―――その強さに多くの者は魅せられるのでしょうね。」

 最後に微笑みを伴って言葉を紡ぐ嵩宰恭子―――だが、しかし

「お言葉ですが、私は武士ではありません―――
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